ABS警告灯(ABSランプ)が点灯・点滅している原因と対処方法

ABS警告灯(ABSランプ)が点灯・点滅している原因と対処方法

トラブル症状

走行中にメーターパネル内で黄色やオレンジ色のABSマークが点灯している状態です。エンジン始動時に点灯し、数秒後に消えるのは正常な動作ですが、始動後しばらくしても消えない場合や、走行中も点灯する場合はABSが故障している可能性があります。

ABSはアンチロックブレーキシステムの略で、急ブレーキ時などにタイヤがロックすることを防ぐ機能です。急ブレーキ時にタイヤがロックすると、路面上を滑るように空走してしまうため制動距離が長くなってしまいます。そこで、センサーがタイヤのロックを検知すると、ABS装置がブレーキの油圧を弱めることでタイヤのロックを解除します。制動力が弱まりタイヤが再び回転し始めると、ブレーキの油圧を再びタイヤがロックするまで上昇させてブレーキをかけるという動作をとても早いスピードで繰り返すことで、制動力を最大限発揮する機構となっています。

ABSランプが点灯したままの場合は、ABSが正しく作動しない可能性がありますので、急ブレーキ時にタイヤがロックして制動力が著しく低下するだけでなく、スリップ状態となりハンドル操作もできなくなり非常に危険です。

車種によってはストップランプやテールランプのバルブ切れ、バッテリー電圧の低下でもABSランプが点灯するケースもありますが、ABSランプが点灯した場合は放置せずにすぐに点検が必要です。

考えられる原因と故障診断

① 車速センサーの故障

原因

タイヤの回転を計測しているセンサーの故障が原因で、タイヤの回転を検知できずにABSランプが点灯しています。車速センサーは4輪それぞれに取り付けられており、各タイヤの回転数を計測することで車の走行スピードを計算しています。また、他のタイヤとの回転数の差異から空気圧の異常やパンクを検知して警告を行います。正確な回転数が計測できないとABSの作動ができないため、警告灯を点灯してABSが動作しないよう制御します。

診断方法

各タイヤの車速センサーと配線コネクターの接続を確認し、異常がない場合には診断ツールを接続してエラーの確認を行います。また、車速センサーが故障するとシフトタイミングがおかしくなる、パワーステアリングが効かなくなる、EPSや空気圧異常の警告灯が点灯するなど、車速に関わるさまざまな不具合を併発するケースも多くあります。

修理・改善方法

コネクターが抜けている場合は接続を行い、診断ツールで正常に作動しているかの確認を行います。診断ツールでエラーが出ているセンサーが見つかった場合には、不具合のあるセンサーを交換することで改善します。

② ABSユニットの故障

原因

ABSユニットは実際に油圧を制御するABSの心臓部です。ABSアクチュエーターとも呼ばれる部品で、油圧を制御するための電動モーターや油圧ポンプ、電磁弁、アキュムレータなどで構成されています。ABSユニットでブレーキ油圧のコントロールを行うため、この部品に異常があるとABSが作動しなくなります。

診断方法

ABSユニットが故障すると、ブレーキング時に違和感があったり、ブレーキ鳴きを引き起こすケースがあります。また、エンジンを停止しているにもかかわらずモーター音がしているケースや、ABSユニットからオイルが漏れているというような症状が出る場合もあります。オイル漏れ以外の不良は外見では判断が難しいため、基本的には診断ツールを接続しての診断となります。

修理・改善方法

ユニットASSYの交換の場合と、部品供給がされている場合は分解修理が可能なケースもあります。ブレーキフルードの抜き取りが必要なため、ブレーキオイルの補充とエア抜きは必須作業です。

③ ECUの故障

原因

ECUは、走行や操作に関わるさまざまな信号や制御を行うメイン基盤です。車速センサーやブレーキの状態をもとにABSユニットに信号を出しています。このECUが壊れると、さまざまな演算が行えなくなるためエラーが出ます。

診断方法

ECUが故障すると、ABSランプ点灯以外にもさまざまな不具合を併発するケースが多くあります。例えば、エンジン回転数が不安定になる、エンストする、エンジンがかからなくなる(イモビライザーを認識しなくなる場合もあり)などの症状が出る場合には、ECUの故障の疑いが強くなります。最終的な判断は、診断ツールを接続してECUの良否判断を行います。

修理・改善方法

ECUユニットASSYの交換が必要となります。ECU交換後はさまざまなデータの登録が必要です。

④ テールランプ、ストップランプのバルブ切れ

原因

一部メーカーでは、バルブ切れを知らせる方法としてABS警告灯を点灯させる車種があります。バルブ切れ以外にも、通常の電球タイプからLEDバルブに変更したことで、抵抗値の違いからバルブ切れと認識して誤作動するケースもあります。

診断方法

ブレーキランプやストップランプのバルブ切れを確認します。バルブ切れと思い込んで症状を放置すると、ABSが作動せず制動距離が伸びてしまう、ステアリングが突然効かなくなるなど、想定外の不具合が発生して事故に繋がる恐れがあるため、専門知識を持つ整備工場やディーラーでの点検を強く推奨します。

修理・改善方法

バルブ切れの場合はバルブ交換と、必要に応じてエラーの消去で改善します。LEDバルブ化が原因の場合はバルブを元に戻し、必要に応じてエラーの消去を行うことで改善します。

⑤ バッテリー電圧の低下

原因

バルブ切れと同様に、一部車種ではバッテリー電圧の低下を知らせる方法としてABS警告灯を点灯させる車種があります。

診断方法

エンジン停止時のバッテリー電圧、エンジン始動後の電圧をテスターで測定します。エンジン停止時よりもエンジン始動後の方が電圧が高くなっていることを確認します。定格電圧よりも低い場合はバッテリーの劣化が疑われます。また、エンジン始動後に電圧が高くならなければ、オルタネーター(発電機)が不良の可能性もあります。

修理・改善方法

バッテリー交換によって改善します。バッテリー交換時には充電電圧や充電電流も確認し、充電機能に異常がないことを確認することが重要です。