アクセルを踏んでも加速しない原因と対処法
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トラブル症状
エンジンは始動するが、シフトを入れてアクセルを踏み込んでも車が発進しないという症状です。車が動かないという症状は同じでも、エンジン回転数が上昇する場合と、エンジン回転数も変化しないケースに大別されます。
エンジンの回転数が上がるケースの場合は、シフトレバーやトランスミッションの故障が考えられるため、意図せず走行し始める可能性があるため危険です。また、油路やギヤが故障している場合は、エンジンをかけ続けたり、むやみに回転数を上げると症状が悪化する可能性があります。
エンジン回転数も変化しない場合は、症状が悪化することは考えにくいですが、走行自体ができないため、どちらにしてもすぐに修理が必要となります。
考えられる原因と故障診断
エンジン回転数が変化する場合
エンジンの回転数が変化していることから、点火、吸排気、燃料、アクセルペダルには異常がないと推察されます。エンジンが正常であれば、動力を伝える機構の部分が壊れている可能性が高くなります。
①シフトレバーの故障
原因
AT車のシフトポジションセンサーや、MT車のシフトレバーリンクなどが故障していると、ギヤをニュートラルからD、Rや1速2速と切り替えることができず、ミッションが切り替わらないため走行できません。
診断方法
AT車の場合は診断ツールを接続し、エラーの確認を行います。また、Rレンジに入れた時にバックランプが点灯しているかなどで、シフトポジションを認識しているかが確認できることもあります。MT車のシフトレバーリンクやシフトケーブルなどの異常発生時は、普段と操作感が異なるケースが多くなります。その後、直接目視でリンクや接続先のミッションを確認することで不良個所を判断します。
修理・改善方法
シフトレバーリンクやワイヤー、シフトポジションセンサーなどの原因となる個所の交換をすることで改善します。
② トランスミッションやトルクコンバーターの故障(AT車)
原因
トランスミッションの内部ギヤの故障や、AT車特有の油圧ライン、MT車で言うところのクラッチに該当する動力伝達装置であるトルクコンバーターが故障し、動力を伝えられなくなると走行することができなくなります。
診断方法
トランスミッションやトルクコンバーターに異常が発生すると、異音がしたり、走行時にショックや振動があるなど普段と異なる挙動が発生します。また、エンジンチェックランプや走行系の警告灯が点灯する場合もあります。診断ツールでエラーの内容を確認しながら総合的な判断が必要です。
修理・改善方法
トランスミッションやトルクコンバーターの交換または、分解オーバーホールによって改善します。大がかりな修理になるケースが多く、分解オーバーホールは修理にかかる時間も長くなり、不良個所以外の消耗品の同時交換作業も必要となります。
③ トランスミッションやクラッチの故障(MT車)
原因
トランスミッション内部ギヤの故障や、クラッチ板の過度の摩耗、クラッチを押し付けるためのプレッシャープレートなどが故障すると、動力を伝えられなくなって走行ができなくなります。
診断方法
クラッチの残数を目視で確認したり、クラッチが滑っていないことを確認するためのテストなどを行います。ミッションの異常発生時は、走行中やシフトチェンジ時に異音が発生したり、振動が発生するケースが多くなります。
修理・改善方法
トランスミッションの交換または、分解オーバーホール、クラッチ板交換によって改善します。大がかりな修理になるケースが多く、分解オーバーホールは修理にかかる時間も長くなり、不良個所以外の消耗品の同時交換作業も必要となります。
エンジンの回転数も変化しない場合
アクセルを踏んでもエンジン回転数が変化しないことから、アクセルペダルに関する部位や、吸入空気量を調整する部品、コンピューターであるECUの不良が疑われます。
④センサー類の故障
原因
電子制御式の車の場合は、アクセルペダルの踏み込み量をセンサーで検知しています。そのため、センサーのコネクターが抜けていたり、センサーが故障して数値の検出ができないと、アクセルペダルが踏まれたことをECUに伝えられず、回転数も変化しません。
診断方法
診断ツールを接続して数値のモニターやエラーを確認します。コネクターの抜けや配線不良は目視にて確認が必要です。
修理・改善方法
センサーの交換、配線修理、コネクターの接続などによって改善します。
⑤ アクセルワイヤーの断線
原因
電子制御式でない車の場合は、アクセルの踏み込みをワイヤーでスロットルバルブに伝えています。そのため、そのワイヤーが断線してしまうとアクセルペダルの踏み込み量を伝えることができず、エンジン回転も変化しません。
診断方法
アクセルワイヤーが断線すると、アクセルとスロットルバルブの連結が切れてしまうため、アクセルペダルの動きが軽く感じます。また、アクセルを踏み込んだ際にスロットルバルブが動いていなければ、ワイヤーが切れている可能性が高くなります。
修理・改善方法
アクセルワイヤーの交換によって改善します。
⑥ 配線の断線
原因
アクセルペダルセンサーや、スロットルバルブセンサー、電子スロットルの配線が断線していると、センサーの情報がECUに入力できずにエンジン回転数が変化しなくなってしまいます。
診断方法
診断ツールを接続し、各センサーの数値をモニターしたりエラーを確認します。配線の断線は見落としやすく、不良個所のセンサーを交換しても症状が改善せずに気が付くケースも多くなります。センサーの不良が疑われる際は、コネクター付近の配線が鋭利な金属部品にこすられていないか、エキゾーストパイプなどの高温となるものと接触していないかなども念入りに確認が必要です。
修理・改善方法
不良個所のつなぎ直しなどで改善します。ただし、再度断線してしまわぬように、配線の取り回しなどには注意が必要です。
⑦ スロットルバルブの故障
原因
アクセルペダルの踏み込みを検知し、ECUがスロットルバルブを開く信号を出しても、スロットルバルブが故障して動かなければエンジンの回転数も上がらなくなってしまいます。
診断方法
診断ツールを接続し、アクセルを踏み込んだ際の数値の変化を確認します。アクセルポジションの数値に変化があり、スロットルバルブのセンサー数値が変化しなければスロットルポジションセンサーの故障が考えられます。また、スロットルバルブの動きを目視することでも判断が可能です。
修理・改善方法
スロットルバルブASSYやスロットルバルブセンサーの交換によって改善します。
⑧ ECUの故障
原因
各センサーからの情報を元に、各アクチュエータである作動部に信号を出していますが、このECUが故障するとセンサーの情報が読み込めなくなったり、作動させるための信号が出せなくなって走行が困難になります。
診断方法
ECUが故障すると、イモビライザーが効かない、様々なエラーが出る、挙動が不安定になるなどの症状が発生するケースが多くなります。診断ツールを使用しても通信ができないことや、異常な数値が出ることもあるため注意が必要です。
修理・改善方法
ECUの交換によって改善します。