エンジンがバックファイヤーする原因と対処方法

エンジンがバックファイヤーする原因と対処方法

トラブル症状

バックファイヤーとは、燃焼室の燃焼が吸気側に逆流する現象で、逆火とも呼ばれます。この現象は、インテークマニホールド内に残った燃料や混合ガスに燃焼室の炎や爆発で引火することで発生します。エンジンルームからパンパン、バンバンなどの破裂音(爆発音)が発生し、場合によってはかなり大きな音となります。

排気側は高熱となるので鉄や金属のパーツでできていますが、吸気側は高熱が想定されていないため樹脂などの可燃性素材が多く、火災の危険があります。特にエアクリーナーは紙でできているため、非常に燃えやすく大変危険です。このため、バックファイヤーの症状が見られた場合は、速やかに対処することが重要です。

※混同されやすいですが、マフラーから破裂音を伴う炎を吹き出すアフターファイヤーとは別物です。また、バックファイヤーはキャブレター車で起こりやすく、燃料の噴射タイミングや噴射量、点火タイミングなどがすべて電子制御されている車では基本的には発生しません。ただし、エンジンのチューンを行っている場合や、レース仕様にしている場合はこの限りではありません。

中村 武央 監修者
整備士 / テクニカルディレクター
中村 武央

兵庫県 猪名川町在住 1972年生まれ

2005年ラリージャパンではチーフメカニックとして活躍。プジョー、シトロエン、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなど、様々な欧州車メーカーの車両を数千台以上担当し、幅広い知識と技術を持つ。10代からクルマに興味を持ち、工業系大学卒業後、大手チューニングショップを経て1999年にYMワークスに入社。 …続きを読む

考えられる原因と故障診断

①バルブタイミングのずれ

原因

通常、シリンダー内での燃焼時には吸気バルブと排気バルブの両方が閉じているはずです。しかし、バルブのタイミングがずれると、点火時にバルブが少し開いた状態になることがあります。これにより、燃焼が逆流する可能性が生じます。

診断方法

診断には、タイミングベルトやタイミングチェーンを目視点検し、異常がないか確認します。また、タイミングベルトやタイミングチェーンが車に装着された状態で手動でエンジンを回転させながら確認する方法も有効です。

修理・改善方法

バルブタイミングのずれは、タイミングベルトやタイミングチェーンによって決まります。そのため、これらが摩耗してコマ飛びや異常な伸びを起こし、タイミングがずれる可能性が高いです。タイミングベルト、タイミングチェーンの交換、調整により改善していきます。

②バルブクリアランスの調整不良

原因

バルブクリアランスとは、バルブを動かすカムとバルブ(またはバルブリフタ)の接点の隙間のことです。この隙間が適切に調整されていないと、バルブが早く開きすぎたり、なかなか閉じなかったりする問題が発生します。バックファイヤーの原因となるのは、シリンダー内で燃焼しているタイミングでインレット側のバルブが開いてしまい、燃焼が逆流している可能性が考えられます。

診断方法

バルブクリアランスの確認には精密な測定が必要です。車種によって、エンジンが温まっている状態(温間時)や冷えている状態(冷間時)での測定が指定されていたり、計測するタイミングによって数値が異なっていることがあるため、製造元の指定する条件下で測定することが重要です。

修理・改善方法

バルブクリアランスの調整によって改善します。ただし、バルブクリアランスの調整には決められた手順があり、エンジンの内部に影響を及ぼす作業のため、十分な知識と技術が必要な作業となります。最悪の場合エンジンブローに至る不具合が発生するため、必ず信頼できる修理店に依頼してください。

③点火タイミングの遅れ

原因

点火タイミングが著しく遅れると、排気工程が終わった後も燃焼が続いたり、吸気バルブが開く直前まで燃焼が残ったりする可能性があります。これにより、次のサイクルの吸気時に残留した燃焼ガスが吸気系統に逆流し、バックファイヤーを引き起こす可能性があります。この場合、ノッキング(エンジンの異音)やエンジンの出力不足を併発している可能性があります。

診断方法

点火タイミングの診断には、タイミングライト(タコライト)を使用します。エンジンの特定のシリンダーの点火コードにタイミングライトを接続し、エンジンを始動してアイドリング状態にします。その後、クランクプーリーやフライホイールに刻まれたタイミングマークを観察し、製造元が指定する基準値と比較します。

修理・改善方法

点火タイミングの遅れは、点火時期の調整によって改善します。点火タイミングの調整方法は、車両の点火システムによって異なります。電子制御システムの場合はECU(エンジンコントロールユニット)のパラメータ調整やソフトウェアアップデートが必要になることがあります。機械式点火システムの場合は、ディストリビューターの取り付け角度を調整します。また、タイミングに関わるセンサーの点検も重要です。

④エンジンの高温化によるプレイグニッション

原因

プレイグニッションとは、点火プラグの点火前に燃焼が始まってしまう現象です。高温になった点火プラグの一部や燃焼室内に堆積したカーボンが熱源となって自己着火してしまう異常燃焼です。これにより、吸気バルブが開いて新しい混合気が充填される前に爆発が始まってしまい、バックファイヤーの原因となります。プレイグニッション状態になる場合は、回転計がレッドゾーンとなるような状態で長時間使用したり、レースなどの過酷な条件が考えられます。

診断方法

プレイグニッションの発生は、エンジンからの特徴的な「ガラガラ」という音、異常な振動、急激な出力低下、燃費の悪化などの症状から推測できます。

修理・改善方法

プレイグニッションの対処には、熱価の高い(より冷えやすい)点火プラグへの交換、冷却システムの向上、エンジン内部のカーボン除去などで改善する可能性があります。

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