冷却液(クーラント)が漏れる原因と対処法

トラブル症状
駐車していると車の下に赤や緑色の水滴が垂れていたり、エンジンルームの一部に赤(ピンク)や緑の結晶のようなものが付着しているのが目視で確認できる症状です。ラジエーターのコアが損傷して漏れ出している場合などは、ラジエーターが常に湿ったような状態になるような症状となる場合もあります。また、クーラントの主成分はエチレングリコールという成分ですが、エチレングリコールは甘い匂いを放つという特徴があるため、クーラントが漏れたり滲んだりしている車両からは独特な甘い匂いがします。また、冷却液の色はメーカーによって異なるため、赤、ピンク、緑、青などの種類があります。液体の状態では濃い色ですが、乾いて結晶状になると色味が薄くなる傾向があるのも特徴です。
クーラント(冷却水)はエンジンの温度を適度に保つために非常に重要な役割があります。そのため、クーラントが徐々に漏れて減っていくと、内部に空間ができて圧力を維持することができずに沸騰してしまい、オーバーヒートの原因となります。オーバーヒートは深刻なエンジンブローにつながる危険があるため、状態によっては安全な場所ですぐにエンジンを停止する必要があります。自走して修理工場に持っていくことが不可能になる可能性が高いため、オーバーヒートを起こす前にしっかりと修理することが大切です。
考えられる原因と故障診断
① ラジエーターコアの損傷
原因
ラジエーターの網目構造の部分はラジエーターコアと呼ばれ、冷却水を通すためのチューブと放熱するためのフィンで構成されています。このラジエーターコア部分に飛び石が当たって損傷し、チューブに傷がついてしまうと、外部にクーラントが漏れ出す原因となります。
診断方法
ラジエーターの目視や、触診によって確認します。雨や洗車したわけでもないのに湿っていたり、変形していないかをチェックします。
修理・改善方法
ラジエーターコアの損傷は基本的にラジエーターの交換での対応となります。ラジエーターを交換する際には冷却水の抜き取り、補充とエア抜きまでがセットで必要な作業です。
② ラジエーターホースの劣化、損傷
原因
エンジンとラジエーターを繋ぐホースは、ゴム素材で作られ、パイプにゴムのホースを差し込むような構造となっているため、外れ防止のために金属製のバンドで締め付けることでしっかりと密着させて、抜けや漏れを防いでいます。ゴム製のホースが経年劣化を起こしてひび割れてしまったり、バンド部分に亀裂が入って滲みや漏れの原因となることがあります。ホースの接続部に赤や緑の結晶ができていたり、クーラントが漏れて湿った状態となるため、目視できる位置であればすぐに見つけることが可能です。
診断方法
目視によって確認します。特に漏れやすい箇所として、バンドの締め付け部やパイプとの境目などがありますので、注意して点検することが必要です。
修理・改善方法
ホースの位置によっては冷却水の抜き取りが少量で済む場合もありますが、基本的には全ての冷却水を抜き取り、作業後にエア抜きの作業が必須です。
③ エンジンの歪み
原因
オーバーヒートを起こしたエンジンは異常な高温となってしまうため、熱の影響で変形します。この時エンジンが歪んでしまうと隙間ができてしまい、エンジン内を循環するクーラントが漏れ出す原因となります。
診断方法
このケースでは明らかにエンジンの継ぎ目から漏れが視認できるため、目視での確認を行います。シリンダーやヘッドが歪んでいるかの詳細な確認は、エンジンを分解したうえ、ストレートエッジと呼ばれる歪みを検査する器具を使用して判定します。
修理・改善方法
歪んでしまったエンジンは再使用ができないため、シリンダーやヘッドなどエンジンのオーバーホールが必要となってしまう可能性があります。
④ ラジエーターキャップの故障
原因
ラジエーターキャップはラジエーターに取り付けてあるキャップで、冷却系統の圧力を高めて沸点を上げる役割があります。温度が上がると圧力も上がるため設定された圧力までは圧力を保持し、一定以上の圧力となった場合には破裂を防ぐために圧力を逃がすような構造となっています。このラジエーターキャップが故障し、規定の圧力も早い段階で圧力を逃がしてしまったり、高温となって体積が増えたクーラントが漏れ出してしまうことがあります。
診断方法
ラジエーターキャップテスターを使用して圧力の保持と規定値での開放のテストを行います。
修理・改善方法
ラジエーターキャップの交換をすることで改善します。
⑤ ウォーターポンプの故障
原因
ウォーターポンプはエンジンの回転を利用して、クーラントをエンジン内部からラジエーターまでを循環させるための部品です。ウォーターポンプ内にクーラントが回っていますので、回転軸部分のシール部などからクーラントが漏れ出すことがあります。漏れ出した箇所ではクーラントが結晶化することが多く、赤や緑色の結晶が見られる場合にはクーラントが漏れ出している可能性が高くなります。
診断方法
エンジンルームをフード側やリフトアップした状態で下側からくまなく点検します。プーリー部やエンジンとの境目に結晶が無いか、染みのような跡はできていないかを確認します。
修理・改善方法
ウォーターポンプの交換によって改善します。タイミングベルトで駆動されるタイプでは、タイミングベルトやテンショナーの同時交換が推奨されます。