ハンドブレーキ/パーキングブレーキが効かない原因と対処法

トラブル症状
ハンドブレーキ/パーキングブレーキが効かないというトラブルです。レバーやペダルを操作しても感触がなかったり、感触はあるもののブレーキ力が弱いなどの症状が見られます。
日本ではハンドブレーキ/パーキングブレーキという呼び方の他に、サイドブレーキ、駐車ブレーキなどと呼ばれることもありますが、基本的には同じものを指します。座席横のレバーを引くタイプや、足元にパーキングブレーキペダルを操作するタイプがあり、駐車時に使用されることが一般的です。
海外では基本的に駐車時にハンドブレーキ/パーキングブレーキは使用せず、MT車ではギヤを1速やバックに入れ、AT車ではPレンジに入れることで車体の動き出しを防止します。そのため、ハンドブレーキ/パーキングブレーキは通常のフットブレーキが何らかの異常で効かなくなった際に使用する、エマージェンシーブレーキと呼ばれることもあります。
※近年では歩行者の飛び出しなどを検知した際に、自動でブレーキがかかるエマージェンシーブレーキという機構もありますが、この記事ではその機構とは別のものを指します。また、電動パーキングブレーキも普及してきましたが、ここでは機械式のパーキングブレーキを対象としています。
考えられる原因と故障診断
① ハンドブレーキ/パーキングブレーキワイヤーの断線
原因
機械式のハンドブレーキ/パーキングブレーキの多くは、レバーやペダルの動きをワイヤーによって後輪に伝えています。このワイヤーが劣化や調整不良などによって断線すると力が伝えられず、ハンドブレーキ/パーキングブレーキが効かなくなってしまいます。
診断方法
ワイヤーが断線するとレバーやペダルを操作しても感触がなく、操作感が感じられません。レバーやペダルを操作してもスカッと何の抵抗もなければ、ワイヤーが断線している可能性が高くなります。
修理・改善方法
ハンドブレーキ/パーキングブレーキワイヤーの交換によって改善します。
② フェード現象によってライニングの制動力が著しく低下している
原因
フェード現象は急こう配でのブレーキ多用や、ハンドブレーキ/パーキングブレーキをかけたまま走行してしまうなど、ブレーキライニングが過度に加熱した際に起こる症状です。
ブレーキパッドやブレーキライニングの素材はある一定以上の温度となると素材が変質してしまい、制動力が著しく低下するフェード現象が発生します。
一度フェード現象が発生したブレーキパッドやライニングは材質が変わってしまうため、温度が低下しても制動力が戻ることはなく、ブレーキが効きにくい状態となります。ブレーキライニングを使用するハンドブレーキ/パーキングブレーキの効きも弱くなるため、ハンドブレーキ/パーキングブレーキをかけても坂道では車両が動いてしまうなどの症状が発生します。
診断方法
ワイヤーの断線と異なり、操作感はいつも通りです。ブレーキパッドやライニングの材質の変化は見た目では判別が難しいため、ブレーキテスターなどを使用して制動力の確認を行います。
修理・改善方法
症状が軽い場合には変質してしまったライニングを研磨することで改善する可能性があります。変質の深度が深い場合や、症状が重い場合にはライニングの交換が必要です。
③ハンドブレーキ/ パーキングブレーキの調整不良
原因
ハンドブレーキ/パーキングブレーキはワイヤーの張り具合やドラムとライニングの隙間など、いくつかの調整箇所があります。ワイヤーやライニングが正常でも、しっかりと調整がされていなければハンドブレーキ/パーキングブレーキの制動力がしっかりと出ずに効きにくい状態となってしまいます。
診断方法
ドラムとライニングの隙間、ハンドブレーキ/パーキングレバーやペダルの引き量や踏みこみ量の調整(ブレーキワイヤーの長さ調整と同義)を行うことで改善します。
修理・改善方法
ハンドブレーキ/パーキングブレーキの調整を正確に行うことで、正常な状態に戻ります。