エンジンから異音(キーキー音・ガラガラ音)がする原因と対処方法

エンジンから異音(キーキー音・ガラガラ音)がする原因と対処方法

トラブル症状

エンジンをかけると「キー」や「ガラガラ」と大きな音がする場合があります。この異音はアイドリング時から鳴り続けることもあれば、エアコンを使用した時やハンドルを切った時、雨の日など特定のタイミングや条件で発生することもあります。エンジンからの異音は、修理が必要な状態に陥っている可能性が高く、放置すると走行不能に至る可能性もあるため、早めに点検が必要です。

中村 武央 監修者
整備士 / テクニカルディレクター
中村 武央

兵庫県 猪名川町在住 1972年生まれ

2005年ラリージャパンではチーフメカニックとして活躍。プジョー、シトロエン、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなど、様々な欧州車メーカーの車両を数千台以上担当し、幅広い知識と技術を持つ。10代からクルマに興味を持ち、工業系大学卒業後、大手チューニングショップを経て1999年にワイエムワークスに入社。 …続きを読む

考えられる原因と故障診断

キー音がする場合

① Vベルト(ファンベルト・ドライブベルト)の過度な緩み

原因

エンジンから「キー」という音がする原因として最も多いのが、ベルト類の緩みによる異音です。Vベルトはクランクプーリーの回転をオルタネーターやコンプレッサーなどの補器類に伝える役割があり、適正な張り具合という基準が定められています。しかし、経年劣化によって少しずつ伸びてくると、補器類の抵抗に負けて滑ってしまうため大きな音が発生します。

ベルトの伸び量が微量で、少し緩くなってきた程度の場合は、雨の日や湿気が多い日だけ音が鳴る、エアコンを使用すると鳴る、油圧パワステの車両ではハンドルを切った時にだけ鳴るなど、負荷が増える特定の条件でのみ音が発生することもあります。

診断方法

Vベルト(ファンベルト・ドライブベルト)を手で触り、張り具合の確認を行います。張り具合には適正値があり、強すぎると補機類の破損、弱すぎると滑りの原因となるため注意が必要です。張り調整が自動のものはオートテンショナーを確認します。

修理・改善方法

ベルトが伸びている場合には、ベルトを新しいものに交換し、張りを調整します。自動調整タイプのベルトテンショナー(オートテンショナー)が壊れている場合には、ベルトテンショナーの交換が必要です。

ガラガラ音がする場合

① ベルトテンショナーの故障

原因

ベルトテンショナー(オートテンショナー)は、タイミングベルトやVベルト(ファンベルト・ドライブベルト)に適度な張り=テンションを自動的にかける部品です。

タイミングベルトは、ピストンの上下とバルブの上下のタイミングを合わせる非常に重要な役割があり、タイミングがズレる原因となる「コマ飛び」が起きないようテンショナーによって適度なテンションがかけられています。

ファンベルトはオルタネーターの位置を動かして張りを調整するタイプと、ベルトテンショナーによって張り具合を自動調整するタイプに分かれます。テンショナーのプーリー部分は、常にベルトを押し付けるように力をかけながら回転していますが、プーリー内部のベアリングにガタや劣化が生じると、ガラガラと異音が発生するようになります。

診断方法

タイミングベルトカバーを取り外してタイミングベルトテンショナーの目視確認や、ベルトを取り外してベルトテンショナーのプーリーにガタや異音がないかを確認します。Vベルト(ファンベルト・ドライブベルト)用のテンショナーも同様に、ベルトを取り外してプーリー部のガタや異音を確認します。

修理・改善方法

ベルトテンショナーの交換によって改善しますが、テンショナーを交換する場合はタイミングベルトの同時交換を推奨される場合がほとんどです。

Vベルトの場合はベルトの劣化が少なければ、テンショナーの交換のみで改善します。

② ウォーターポンプの故障

原因

冷却水を循環させるための原動力を作り出すのがウォーターポンプです。ウォーターポンプはタイミングベルトで駆動されるものと、Vベルトによって駆動されるものに分かれますが、どちらの駆動方式でも異音が発生する可能性があります。

ウォーターポンプに不具合が発生すると、「クー」や「キュー」のような音が聞こえるケースと、回転部分の摺動不良やベアリングの劣化やガタによってガラガラという音が発生するケースがあります。

診断方法

タイミングベルトカバーやベルトを取り外して、ウォーターポンププーリーのガタや異音を確認します。

修理・改善方法

ウォーターポンプの交換によって改善します。タイミングベルト駆動のウォーターポンプを交換する場合は、ベルトテンショナーやタイミングベルトを取り外しての交換となるため、これらの部品も同時交換することを推奨します。

③オルタネーターの故障

原因

発電機であるオルタネーターもクランクプーリーの駆動力によって回転しています。この動力はVベルト(ファンベルト・ドライブベルト)によって伝えられいますが、オルタネーターのプーリー部のベアリングの故障するとガラガラと異音が発生する事があります。

診断方法

ベルトを取り外して、オルタネーターのプーリー部にガタや異音がないかを確認します。

修理・改善方法

オルタネーターは基本的にASSYでの交換となります。

④エンジンオイル不足に陥っている

原因

長期間エンジンオイルの交換をせずに使用を続けてしまった場合や、オイル上がりやオイル下がりでエンジンオイルが燃焼してしまい、エンジンオイルが不足した状態で走行を続けるとエンジンオイルの温度が上がりやすくなって劣化が進み、潤滑能力や清浄能力が著しく低下して摺動部の摩耗やベアリングの摩耗を引き起こします。

初期は潤滑不足による異音ですが、放置して使用を続けると摩耗が進行し、ノッキングやベアリングの焼き付きによる大きな異音へと変化し、最終的にはエンジンが焼き付いてしまいます。

診断方法

オイルレベルゲージでエンジンオイルの残量を確認します。また、オイルポンプの不良による潤滑不足の可能性もあるため、オイルフィラキャップの取り外しやエンジンヘッドカバーの取り外しを行い、エンジン上部にオイルがしっかり回ってきているかの確認をします。エンジンの上部が乾いていたり、オイルパンにオイルがあるにもかかわらず、エンジンヘッドにドロドロになったオイルの塊しかない場合はオイルポンプの不良も考えられます。

修理・改善方法

オイルが不足しているだけであれば補充することで改善が期待されますが、汚れがある場合はエンジンオイルの交換が必要です。また、オイル交換をしばらくせずにオイルがチョコレート状に固まってしまっていた場合はフラッシングなどによって汚れを取り除く作業も必要です。オイルポンプが故障している場合はオイルポンプの交換が必要です。

キー音、ガラガラ音どちらの可能性もある故障

① エアコンコンプレッサー(マグネットクラッチ)の故障

原因

Vベルト(ファンベルト・ドライブベルト)で駆動されるエアコンプレッサーのマグネットクラッチ部分や、コンプレッサー自体にガタや故障が発生するとガラガラと異音の原因となります。また、コンプレッサーが完全に焼きついてロック状態となると、駆動するベルトが滑り「キー」という非常に大きな音が発生し、そのまま使用を続けるとベルトが破断します。

診断方法

マグネットクラッチのプーリー部のガタつきはベルトを取り外して触ることで確認ができますが、コンプレッサーと繋がった際の異音は実際にエアコンを使用し、コンプレッサーを駆動させながら確認が必要です。

修理・改善方法

マグネットクラッチ単体の部品設定がある車両で、マグネットクラッチの故障のみであればマグネットクラッチの交換で改善します。コンプレッサー本体の故障や、マグネットクラッチ単体での部品設定が無い場合はコンプレッサーASSYでの交換が必要です。