カーエアコンが冷えない・効かない原因と対処方法

カーエアコンが冷えない・効かない原因と対処方法

トラブル症状

エアコンのスイッチを入れても、吹き出し口からぬるい風しか出てこない、または多少は冷たい風が出るが、設定温度にまで下がらないという症状です。このような症状は、エアコンの故障や操作方法の問題が原因である可能性があります。

車のエアコンは家庭用のエアコンとは異なり、冷媒用ガスの循環をON/OFFさせる仕組みがあります。車の空調操作パネルには設定温度、風量、AUTO、A/C、内気/外気切り替えなどのボタンがあり、A/Cボタンが押されていない状態ではコンプレッサーが作動しないため、冷媒用ガスが循環されず外気温より冷たい風は吹き出しません。冷房の場合、A/Cボタンが押されていないと、冷却機能のない送風機となってしまいます。

家庭用のエアコンは暖房でも冷房でもコンプレッサーが作動しますが、車の場合、暖房はラジエーターの熱を利用して温風を生み出します。そのため、コンプレッサーを動作させなくても暖かい風を送り出すことが可能です。ただし、フロントガラスの曇りを取るためにはA/Cボタンを押してコンプレッサーを作動させると、湿度が低下して曇りが解消されます。

※電気自動車やハイブリッド車は仕組みが異なりますので、ご注意ください。

中村 武央 監修者
整備士 / テクニカルディレクター
中村 武央

兵庫県 猪名川町在住 1972年生まれ

2005年ラリージャパンではチーフメカニックとして活躍。プジョー、シトロエン、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなど、様々な欧州車メーカーの車両を数千台以上担当し、幅広い知識と技術を持つ。10代からクルマに興味を持ち、工業系大学卒業後、大手チューニングショップを経て1999年にワイエムワークスに入社。 …続きを読む

考えられる原因と故障診断

① A/Cスイッチが押されていない

原因

コンプレッサーを作動させるためのスイッチが押されておらず、コンプレッサーが作動していない。コンプレッサーが作動しないと、冷媒の循環が行われずに冷たい空気が出てこなくなります。

診断方法

エアコンパネルのA/Cボタンが押されているかを確認します。

修理・改善方法

A/Cスイッチを入れ、最大風量にして冷房の効き具合を確認しましょう。

② 内気循環になっていない

原因

車のエアコンは外気導入と内気循環の切り替えが可能です。文字通り外気を取り入れるか、外気を取り入れずに車内の空気を循環させるかの切り替えとなり、内気循環の方が冷房効率が良くなります。特に炎天下の渋滞や高温のトンネル内での渋滞時に外気導入にしていると冷えが弱いと感じることがあります。

診断方法

外気導入と内気循環の切り替えスイッチを確認します。

修理・改善方法

外気導入と内気循環の切り替えスイッチを内気循環に切り替えることで改善します。

③ エアコンフィルターの詰まり

原因

エアコン用のフィルターが目詰まりを起こし、風量が著しく弱くなっている可能性があります。

診断方法

エアコンフィルターを取り外し、汚れ具合を確認します。エアコンフィルターの取り外し方法は取扱説明書をご確認ください。

修理・改善方法

エアコンフィルターを交換することで改善します。

④ エアコンガスの不足

原因

冷たい風を作り出すためにはエアコンガスが適量封入されていることが必要です。経年劣化による微量の漏れなどでガスが減ってしまう場合があります。

診断方法

エアコンガス量はサイトグラスという覗き窓のような部品を通過する冷媒の気泡量で判断が可能です。また、ガス圧が規定値より低い場合もガスの不足が疑われます。

修理・改善方法

エアコンガスの追加補充は適正量が決まっているため、過充填や不足はエアコンの効きが悪くなる原因となります。本来は一度エアコンガスを全て回収し、真空引きを行ったうえで適正量の新品ガスを充填するのが望ましいです。頻繁にガスが不足する場合は接続部やパイプに漏れが発生している可能性があるため、修理が必要です。

⑤ コンプレッサーの故障

原因

エアコンガスを圧縮するためのコンプレッサーが故障し、エアコンが効かなくなっている可能性があります。

診断方法

エアコンのスイッチを入れるとガラガラと異音がしたり、コンプレッサーが焼きついて回転しなくなるとベルトが焼けてエンジンルームから異臭が発生します。

修理・改善方法

コンプレッサーを交換し、エアコンガスを再度充填することで改善します。

⑥ マグネットクラッチの故障

原因

コンプレッサーの駆動には大きなエネルギーが必要です。エアコンを使用しない間はベルトに繋がっているプーリー部分を空回りさせ、必要な時にだけ動力を伝えてコンプレッサーを回転させる仕組みとなっています。これを「マグネットクラッチ」と呼びます。このマグネットクラッチが故障すると、エアコンを使用してもコンプレッサーが回転せず、冷たい風が出なくなります。

診断方法

A/Cスイッチが入った状態で冷房をかけ、カチッという音とともにエンジン回転が高くなれば正常です。カチッという音がしなかったり、エンジンの回転数が上がらない場合はマグネットクラッチが作動していない可能性があります。

修理・改善方法

車種によってマグネットクラッチ単品で交換できるものと、コンプレッサーと一体となっていてASSY交換しかできないものがあります。マグネットクラッチやコンプレッサーASSYでの交換によって改善します。

⑦ エアコンリレー(マグネットクラッチリレー)の故障

原因

マグネットクラッチのON/OFFには大きな電力が必要なため、リレー回路が用いられています。マグネットクラッチ用のリレーが故障して接点不良が起こると、マグネットクラッチに電気が送られず、マグネットクラッチが作動しなくなります。

診断方法

エアコンリレーのコネクター部で電圧の測定を行い、コイル側および接点側が正しく作動しているか確認します。

修理・改善方法

エアコンリレーの交換によって改善します。

⑧ エアコンベルトの破断

原因

コンプレッサーを駆動するためのベルトが切れて、コンプレッサーが駆動できなくなっている可能性があります。

診断方法

ボンネットを開けてコンプレッサーにかかっているベルトを確認します。また、ベルトの劣化による破断ではない場合、コンプレッサーの焼き付きも疑われますので、コンプレッサーのプーリーを手で回してみることも必要です。

修理・改善方法

ベルトの交換によって改善しますが、コンプレッサーやマグネットクラッチに異常がある場合にはそれらの交換も必要になります。

⑨ エアコンライン各種の不具合

原因

車のエアコンシステムは、圧縮機であるコンプレッサー、一次冷却装置のコンデンサー、冷媒の一次保存や不純物を取り除くレシーバー、噴霧装置であるエキスパンションバルブ、熱交換器のエバポレーターなど多くの部品から成り立っています。その中の一つでも故障するとエアコンの効きが悪くなります。

診断方法

エアコンの故障診断には高度な知識と豊富な経験が必要です。起きている事象と不具合内容から総合的に判断します。

修理・改善方法

不具合を起こしている箇所の交換によって改善しますが、いずれの作業にも専用の機械やゲージを使用しながらエアコンガスの回収や真空引き、規定量のエアコンガス充填が必要です。

以上が、エアコンが効かない場合に考えられる原因とそれぞれの対処方法です。エアコンの不調は快適な車内環境を損なうだけでなく、他の車両システムにも影響を与える可能性がありますので、異常を感じたら早めの点検・修理をお勧めします。