車の燃費が悪くなった原因と対処方法

トラブル症状

以前と比べて燃費が悪くなったと感じる症状は、多くの車オーナーが経験するトラブルです。具体的には、燃料を満タンにした後の走行距離が短くなってしまったり、同じ距離を走行するのに以前より多くの燃料を消費するようになったりします。この症状は、エンジン警告灯の点灯を伴う場合もあり、より深刻な問題の兆候である可能性があります。

燃費悪化の原因によっては、車両の安全性や性能に影響を及ぼす可能性があります。例えば、タイヤの空気圧不足が原因の場合、パンクやバーストの危険性が高まります。一方、カスタムパーツの追加や積載荷物の増加が原因の場合、安全性への直接的な影響は少ないものの、車両の性能や乗り心地に変化が生じる可能性があります。エンジン警告灯の点灯を伴う場合は、センサー類の不具合などエンジン本体の問題につながっている可能性があり、放置するとエンジン不調をきたす恐れがあります。

燃費悪化の原因は多岐にわたり、複数の要因が重なっている可能性もあります。下記の診断方法を参考に診断を行い、問題が特定できない場合や、修理に専門的な知識や技術が必要な場合は、専門の知識を持つ整備工場での点検をお勧めします。定期的なメンテナンスと適切な運転習慣を心がけることで、燃費の改善と車両の長寿命化を実現できます。

考えられる原因と故障診断

1. タイヤの空気圧不足

原因

タイヤの空気圧が適正値より低い状態では、タイヤの接地面積が増加し、路面との摩擦(回転抵抗)が大きくなります。これにより、エンジンに余分な負荷がかかり、同じ距離を走行するのにより多くの燃料を消費してしまいます。結果として、燃費の悪化につながります。

診断方法

タイヤの空気圧は、エアゲージを使用して簡単に確認することができます。各タイヤの空気圧を測定し、車両の取扱説明書やドアピラーに記載された推奨値と比較します。

修理・改善方法

適正な空気圧に調整することで、この問題は容易に解決できます。ガソリンスタンドや自動車用品店に設置されている空気入れを使用して、推奨値まで空気を補充してください。定期的な点検と調整を心がけることで、燃費の改善だけでなく、タイヤの寿命延長や安全性の向上にもつながります。

2. エンジンの劣化(摩耗)

原因

エンジンの主要部品であるピストンリングやシリンダー内壁が経年使用により摩耗すると、シリンダー内の圧縮圧(エンジンが燃料を圧縮する際の圧力)が低下します。これによりエンジンの出力が落ち、同じ距離を走行するのにより多くの燃料を必要とするようになり、燃費が悪化します。

診断方法

エンジンの圧縮圧を測定することで、劣化の程度を診断できます。この作業には特殊な工具(コンプレッションゲージ)が必要です。より詳細な診断を行うには、エンジンを分解して各部品の摩耗状態を直接確認する必要があります。

修理・改善方法

エンジンの核となる部品の不具合であるため、単純な部品交換では対応できません。エンジンの分解とオーバーホール(全面的な分解整備)が必要となります。この作業は高度な技術と専門知識を要するため、専門の知識を持つ整備工場での修理をお勧めします。

3. O2センサーの故障

原因

O2センサー(酸素センサー)は、排気ガス中の残存酸素濃度を測定し、その情報をエンジン制御コンピューターに送ることで、最適な燃料噴射量を調整する重要な役割を果たします。O2センサーは燃料の濃い(リッチ)と薄い(リーン)を判定しますが、不具合によってリーン判定を出力しつづけると、エンジン制御コンピューターは適切な燃料制御ができなくなり、必要以上に燃料を供給してしまうため、燃費が悪化します。また、O2センサーの故障時には、多くの場合エンジン警告灯が点灯します。

診断方法

O2センサーの故障診断には、専用の診断ツール(スキャンツール)を使用してエラーコードを読み取る必要があります。この作業は専門知識を要するため、整備工場での診断をお勧めします。

修理・改善方法

O2センサーの故障が確認された場合、センサーの交換が必要です。交換後は、エンジン制御コンピューターの再学習が必要な場合もあります。適切な交換と調整を行うことで、燃費の改善と同時に、エンジンの性能や排出ガスの浄化効率も向上します。

4. エアロカスタム、タイヤサイズの変更

原因

車の外観や性能を向上させるためのカスタマイズが、思わぬ燃費悪化を招くことがあります。例えば、空力性能を重視したエアロパーツの装着は、見た目は格好良くなりますが、空気抵抗が増大し燃費を悪化させる可能性があります。同様に、ワイドタイヤや扁平率の低いタイヤへの変更は、走行安定性は向上しますが、路面との接地面積が増えることで回転抵抗が大きくなり、燃費に悪影響を及ぼします。

診断方法

燃費悪化の前後で、どのようなカスタマイズを行ったかを確認します。エアロパーツの追加やタイヤサイズの変更が行われていれば、それらが原因である可能性が高いです。

修理・改善方法

燃費を改善するには、カスタマイズ前の状態に戻すことが最も効果的です。ただし、カスタマイズの目的(例:スポーティな外観や走行性能の向上)と燃費のバランスを考慮し、どちらを優先するかを判断する必要があります。燃費を重視する場合は、空気抵抗の少ないデザインのエアロパーツを選んだり、標準サイズに近いタイヤを使用したりするなど、妥協点を見つける方法もあります。

5. 積載荷物の増加や乗車人数の変化

原因

車両の重量が増加すると、それに比例してエンジンにかかる負荷も大きくなります。日常的に積載する荷物が増えたり、普段より多くの人数で乗車したりすることで、車両重量が増加し、燃費が悪化します。

診断方法

燃費悪化の前後で、積載している荷物の量や通常の乗車人数に変化がないか確認します。特に、トランクやリアシートに不要な荷物を積んだままになっていないかチェックします。

修理・改善方法

不要な荷物を減らし、必要最小限の積載量に抑えることで改善が見込めます。日常的に使用しない道具や装備品は車から降ろし、必要な時だけ積むようにしましょう。また、乗車人数が多い場合は、可能な範囲で荷物を減らすなどの工夫をすることで、燃費への影響を最小限に抑えることができます。

6. ブレーキシステムの引きずり

原因

ブレーキキャリパーの戻り不良や、パーキングブレーキ(ハンドブレーキ)の調整不良、故障によって、ブレーキが完全に解放されない状態で走行すると、常に制動力が働いているような状態となり、走行抵抗が増大します。これにより燃費が悪化するだけでなく、ブレーキパッドの異常摩耗や、最悪の場合、ブレーキ性能の著しい低下(ベーパーロック現象やフェード現象)を引き起こす可能性があり、非常に危険です。

診断方法

車体をジャッキアップし、ブレーキを完全に解放した状態で各タイヤを手で回転させます。タイヤがスムーズに回転しない場合、ブレーキの引きずりが疑われます。また、走行中にブレーキから異音がする、ブレーキペダルが戻りにくいなどの症状も引きずりの兆候かもしれません。

修理・改善方法

ブレーキシステムの総合的な点検と調整が必要です。ブレーキキャリパーのオーバーホール、ブレーキホースの交換、パーキングブレーキケーブルの調整などが考えられます。フェード現象などでブレーキパッドやブレーキシューが変質している場合は、これらの部品の交換も必要になります。ブレーキシステムは安全性に直結する重要な装置であるため、専門の知識を持つ整備工場での修理をお勧めします。

7. ハイグリップタイヤへの交換

原因

ハイグリップタイヤは、その名の通り路面との接地性能(グリップ力)が高く、スポーティな走りや高速走行時の安定性を向上させます。しかし、このグリップ力の高さは同時に回転抵抗も増大させるため、燃費の悪化につながります。

診断方法

燃費悪化の前後でタイヤを交換した場合、装着したタイヤの種類を確認します。タイヤのサイドウォールに記載された情報や、タイヤショップでの購入履歴を参照し、ハイグリップタイヤに変更していないか確認します。

修理・改善方法

燃費を重視する場合は、標準的なタイヤや低燃費タイヤに履き替えることで改善が見込めます。ただし、ハイグリップタイヤを選択した理由(例:スポーツ走行や安全性の向上)と燃費のバランスを考慮し、使用目的に応じた最適なタイヤを選択することが重要です。

8. エンジンオイルの劣化

原因

エンジンオイルは時間の経過とともに劣化し、その潤滑性能が低下します。劣化したオイルは粘度が変化し、エンジン内部の摩擦を適切に低減できなくなります。その結果、エンジン内部の抵抗が増大し、燃費が悪化します。特に近年の低燃費エンジンでは、非常に低粘度のオイルが使用されており、劣化による影響がより顕著に現れやすいため注意が必要です。

診断方法

オイルレベルゲージを抜き、付着したオイルの色や粘性を確認します。新鮮なオイルは透明度が高く、指で触れるとサラサラとした感触がありますが、劣化したオイルは黒ずみ、粘つきが増します。また、オイル交換からの走行距離や経過時間も重要な判断材料となります。

修理・改善方法

定期的なエンジンオイルの交換が最も効果的な改善方法です。車両の使用状況や走行距離に応じて、適切なタイミングでオイル交換を行うことが重要です。また、オイルフィルターの交換時期が来ている場合は、同時に交換することをお勧めします。適切な粘度のオイルを使用し、定期的に交換することで、燃費の改善だけでなく、エンジンの寿命延長にもつながります。