エンジンがオーバーヒート・過熱している原因と対処方法

トラブル症状

エンジンの始動や走行は可能だが、しばらく走るとオーバーヒートしてしまう。初期症状では、水温計がいつもより上がったり、高温を示す赤い水温計のマークなどが点灯する。中期症状では、水温計が上限に達する、水温計のマークが点滅する、甘い匂いがする、冷却水のリザーバータンクから冷却水や蒸気が吹き出す、エンジンの回転数が安定しないなどの症状が発生する。末期症状ではオイルが焦げたような異臭がしたり、エンジンから明らかに異音が発生している、ボンネットから蒸気ではなく煙がでている等の症状が出る。

オーバーヒートはエンジンの冷却装置が正しく機能せず、エンジンが異常に過熱された状態となる深刻な故障です。放置しているとエンジンが停止してしまったり、エンジンオイルの潤滑能力がなくなり最終的にエンジンが焼きついて始動不能になるなど、重篤なダメージが発生します。

監修者
整備士 / テクニカルディレクター
中村 武央

兵庫県 猪名川町在住 1972年生まれ

2005年ラリージャパンではチーフメカニックとして活躍。プジョー、シトロエン、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなど、様々な欧州車メーカーの車両を数千台以上担当し、幅広い知識と技術を持つ。10代からクルマに興味を持ち、工業系大学卒業後、大手チューニングショップを経て1999年にYMワークスに入社。 …続きを読む
2005年ラリージャパンではチーフメカニックとして活躍。プジョー、シトロエン、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなど、様々な欧州車メーカーの車両を数千台以上担当し、幅広い知識と技術を持つ。10代からクルマに興味を持ち、工業系大学卒業後、大手チューニングショップを経て1999年にYMワークスに入社。確かな工学知識と柔軟な発想で、幅広い車種の整備・修理・カスタマイズを手がける。鋭い洞察力と豊富な経験を活かし、マニュアルに頼らない対応力でYMワークスの中核を担う。趣味はカート、スポーツ走行、車両製作。ラリー車両製作から輸入旧車のレストアまで幅広く対応。 閉じる

考えられる原因と故障診断

①冷却水の漏れ、不足

原因

ラジエーターホース接続部に亀裂が入ってしまったり、ウォーターポンプからの水漏れによって冷却水が不足してしまうことがあります。また、冷却水の定期的な確認や補水を怠ってリザーバータンクが空になってしまうと、冷却効率が悪化してオーバーヒートの原因となります。

診断方法

リザーバータンクやラジエーター内の水量を目視で確認し、減っている場合は補充します。補充してもすぐに減ってしまうようであれば冷却水の漏れを疑い、冷却系統を目視で確認します。ラジエーターキャップを外して冷却水の量を確認する場合は、必ずエンジンが冷えている状態で行ってください。エンジンが熱い状態でキャップを外すと、熱湯が噴き出し大変危険です。ラジエーターキャップテスターをラジエーターに取り付け圧力を欠けながら漏れを確認する点検も有効です。

修理・改善方法

冷却水の漏れが確認された場合、ラジエーターホースや、ラジエーター本体など漏れの発生している箇所の交換が必要です。冷却水が単に不足している場合は補水します。

②サーモスタットの故障

原因

サーモスタットは冷却水温の低い間、水路の一部を閉じて制限することで、エンジンの暖気をスムースにする役割があります。サーモスタットが故障すると、暖機後も水路が閉じたままになり、冷却水がラジエーターを通過できず、結果としてエンジンのオーバーヒートを引き起こすことがあります。

診断方法

エンジン始動前と暖気後にラジエーターホースの温度を触って確認します。暖気後にアッパーホースとロアホースの温度が明らかに異なる場合、サーモスタットの不良が疑われます。エンジン暖気後はエンジンやエキゾーストマニホールド周辺が非常に熱くなっていますので、火傷しないよう注意が必要です。また、エンジン始動中は回転物が多く、場合によっては突然ファンが回転し始める可能性もあるため、必ずエンジン停止後に確認してください。サーモスタットは取り外して単体点検が可能です。取り外したサーモスタットを熱湯に浸け、可動部が反応して動くかどうかで判断が可能です。

修理・改善方法

故障したサーモスタットは新しいものと交換することで改善します。

③ラジエーターの目詰まり

原因

ラジエーターは冷却水を網目状の水路を通じて流すことにより、走行中の風や冷却ファンからの風を利用して水温を下げます。しかし、このラジエーターの水路が詰まって水が流れにくくなったり、網目部分に枯葉、汚れ、埃が大量に付着すると空気の流れが阻害され、

十分な冷却が行えずオーバーヒートの原因となることがあります。

診断方法

ラジエーターの網目部分の汚れや詰まりは、直接目視で確認することが可能です。

修理・改善方法

ラジエーター表面の枯葉、ゴミ、ビニール袋など、空気の通りを妨害している異物を取り除きます。泥汚れがひどい場合は、洗浄にて取り除きます。

④冷却水路内の詰まり

原因

劣化した冷却水を使用していると、水垢や錆びが発生することがあります。その水垢や錆びが一度発生するとどんどん増えてしまい、大量に発生すると水路の狭い部分に詰まって冷却水の流れを阻害しオーバーヒートの原因となります。

診断方法

内部の詰まりは目視で確認ができないため、目視で確認が難しいため、冷却水を抜く際にヘドロやその他の汚れが出てくるかをチェックします。また、ラジエーターの内部の詰まりが疑われる場合、暖気後にラジエーター表面を触り、温度にムラが無いかで判別できる場合もあります。

修理・改善方法

ラジエーター本体が詰まっている場合は、新しいラジエーターに交換します。エンジンの冷却水路内が詰まっている場合は、冷却水路内の洗浄を行います。

⑤ ラジエーターキャップの不良 

原因

冷却水路は沸点を上げるために、大気圧よりも高い圧力となるように設計されています。ラジエーターキャップはこの圧力を適切に保つ役割を担い、定められた圧力までは圧力が逃げないように保持します。しかし、規定値を超えた場合は破損を防ぐために圧力を逃がす機構を備えています。ラジエーターキャップが不具合を起こし、圧力を保てなくなると沸点が下がり、液体が沸騰しやすくなります。沸騰によって発生する気泡は冷却効率を著しく低下させ、結果的にオーバーヒートしやすくなります。

診断方法

ラジエターキャップテスターを使用し、このテスターを使ってラジエターキャップの気密性や圧力保持能力、およびリリース圧を確認します。

修理・改善方法

不良が確認されたラジエーターキャップは新しいものに交換することで改善します。

⑥ ウォーターポンプの不良

原因

ウォーターポンプは冷却水の循環を担う部品で、このポンプに異常が発生すると、冷却水の流れが阻害され、エンジンの適切な冷却が行われず、オーバーヒートが発生します。

診断方法

ウォーターポンプの駆動ベルトを取り外し、単体にした状態で手で回してみて、異音やガタつき、違和感があるかを確認します。これらの症状が見られた場合、ウォーターポンプの不良が疑われます。

修理・改善方法

不具合が確認されたウォーターポンプは、新しいものに交換することで改善します。

⑦ラジエーターファンの故障

原因

ラジエーターファンは、車が走行していない時(ラジエーターに風が当たらない状態)でもラジエーターを強制的に冷却する装置です。通常、水温が90度〜100度に達したときに作動し、エンジンの過熱を防ぎます。渋滞時によくオーバーヒートするという症状は、ラジエーターファンが故障している可能性があります。

診断方法

ラジエーターファンの駆動方式は、ベルト式とモーター式の二つに大別されます。ベルト式の場合はベルトの状態を確認します。モーター式の場合、高温時にファンリレーが作動するかどうかを音やテスターで検証します。ファンリレーが正常に機能しているにもかかわらずファンが動かない場合、ファンモーター本体に不具合がある可能性があります。この場合、ファンモーターに直接電圧をかけて単体でテストを行います。また、ファンリレーまで電圧が来ていない場合は、ファンモーター用ヒューズの状態を確認が必要です。

修理・改善方法

ベルト式の場合、ベルトが緩すぎると適切な冷却が行われないため、ベルトの張りを調整します。もしベルトが切れている場合は、新しいベルトに交換が必要です。モーター式の場合は、ファンリレー(ファンスイッチ)やファンモーターの交換を行います。また、ヒューズが溶断している場合、それが過電流によるものであることが多いため、溶断の原因を特定して解消した後でヒューズの交換を行います。

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