エンジンが通常より大きな音で回転している原因と対処方法

トラブル症状
アイドリングの回転数が通常よりも高く、いつもより音が大きく感じる。または、エンジンの暖気が終わっても回転数が下がらず、冷間時の回転数が維持されている。このような症状が発生する場合は、余計なエンジン回転による燃費の悪化が懸念されるだけでなく、不具合箇所によってはブレーキにも影響が出てしまいます。ブレーキの異常は事故に繋がる危険性が非常に高くなるため、至急点検・修理が必要となります。
考えられる原因と故障診断
① ISCVバルブの固着
原因
ISCV(アイドリングスピードコントロールバルブ)はエアコンの使用による負荷の増減があった際に、空気の流入量を変化させてエンジン回転数をコントロールするための部品です。
空気の流入路を開閉する部分に汚れが溜まると、動きを妨げられて開きっぱなしになってしまったり、閉じたまま開けなくなったりします。開いた状態で固着してしまうと空気の流入量が増加した状態から戻らなくなってアイドリング回転が高いままとなります。
診断方法
スロットルボディを取り外し、ISCVの可動部の汚れや固着を確認します。
修理・改善方法
汚れが原因の場合はスロットルボディの分解、ISCVの可動部の清掃によって改善しますが、故障して動かなくなっている場合はISCVの交換が必要となります。
② ブレーキバキュームホースの亀裂、抜け
原因
エンジンが空気を吸い込む際の負圧は、ブレーキブースターを作動させる負圧としても利用されています。ブレーキブースターは、人間がブレーキペダルを踏み込んだ際に大気圧とエンジンの負圧の差を利用してブレーキ力をアシストし、強力な制動力を産み出す機構です。
エアクリーナーケースやダクト部とブレーキブースターはホースで繋がれており、バキュームホースと呼ばれます。このホースに亀裂が入ったり外れたりするとスロットルボディ側に余計な空気を吸い込んでしまい、ブレーキブースターへの負圧は減ってしまったり全くない状態になってしまいます。そうなると余計な空気を吸ったエンジンは空気量に合わせて燃料を噴射するため回転数は上昇し、ブレーキブースターへの負圧が減る事でブレーキブースターによるアシストが効きにくい状態となります。
ブレーキブースターが効いていない状態のブレーキは非常に効きが悪く、足の力だけで急ブレーキをかけることは極めて困難となり非常に危険です。
診断方法
エアクリーナーやダクトにつながるホースを探し、ゴムの劣化による亀裂や取り付け部のヒビなどがないか、外れていないかを確認します。
修理・改善方法
外出先でこの症状が発生した場合は、ホースの亀裂部分やひび割れ部分にビニールテープなどを巻いて空気の流入を防ぐことで一時的な応急処置が可能な場合があります。取り付け部分のひび割れは、ホースの長さに余裕がある場合に限り、切り詰めて取り付け直すことで応急処置が可能です。ただし、いずれの場合も早急に交換が必要です。
③ スロットルバルブの固着
原因
スロットルバルブの開閉部分に汚れが溜まって動きが渋くなり、しっかりと閉じられなくなると吸入空気量が増加してしまいます。吸入空気量に応じて燃料噴射も増えてしまうため、アイドリングの回転数が高くなってしまう可能性があります。
診断方法
スロットルボディのバルブ部分を確認し、汚れ具合やバルブの動きを確認します。
修理・改善方法
スロットルボディの取り外しを行い、バルブ部分の清掃を行うことで改善します。車種によっては取り外さずに清掃が可能な場合もあります。
④ アクセルワイヤーの引っ掛かり
原因
機械式のアクセル機構では、アクセルペダルとスロットルバルブがワイヤーで繋がっており、アクセルペダルの動きとスロットルバルブの動きをリンクさせています。このワイヤーの内部錆びや油切れによって動きが渋くなると、引っ掛かりや戻り不良などの症状が発生し、アクセルペダルの戻りが悪くなるとエンジン回転が下がらなくなることがあります。
診断方法
エンジンをかけていない状態でアクセルペダルを手で操作し、スムーズに動くかを確認します。
修理・改善方法
アクセルワイヤーの交換を行うことで改善します。
⑤ 水温センサーの故障
原因
水温センサーが故障して冷却水温の検知ができず、暖気が終わっても冷間時と誤認している可能性があります。この場合はメーターパネル内の水温計が動かなかったり、冷間時を示す青色の水温マークが点灯したまま消えないなどの症状が併発します。
診断方法
診断ツールを使用して冷却水温を確認したり、エラー履歴を確認します。
修理・改善方法
水温センサーの不良の場合には水温センサーの交換を行うことで改善します。
⑥ フロアマットの引っ掛かり
原因
床面に敷いたフロアマットがずれてしまい、アクセルペダルに干渉するとアクセルペダルの戻りが悪くなってしまったり、最悪の場合は踏み込んだ状態から戻らなくなる危険があります。これは車両本体の不具合ではありませんが、消費者庁からも注意喚起が出るほど発生しやすい不具合であり、突然起きるとパニックに陥る可能性があります。
フロアマットはしっかりと固定して使用する必要があることはもちろんですが、万が一暴走状態となってしまった場合は焦らずにシフトをニュートラルに入れ、ブレーキをかけましょう。
診断方法
使用しているフロアマットの状態を確認し、ズレやすくないか、アクセルペダルに干渉していないかを確認します。
修理・改善方法
フロアマットが固定されていない場合はしっかりと固定します。純正以外のフロアマットを使用しており、アクセルペダルに干渉している場合は使用を止めましょう。
以上が、エンジンのアイドリング回転数が高い場合に考えられる主な原因とその診断方法、修理・改善方法です。エンジンの不具合は放置すると大きなトラブルに繋がることがありますので、異常を感じた際には速やかに点検・修理を行うことが重要です。