パワーウインドウの開閉が遅い・動かない原因と対処方法

パワーウインドウの開閉が遅い・動かない原因と対処方法

トラブル症状

パワーウインドウの動きが遅かったり、まったく動かなくなる症状です。パワーウインドウに関するトラブルは比較的起こりやすく、さらに窓の開閉が困難になると様々な面で問題が発生します。運転席の窓が開かなくなるとコインパーキングなどのチケットを取ることが難しくなってしまうため注意が必要です。

また、どこの席でも窓が閉められなくなってしまうと施錠が意味をなさず、セキュリティに問題が生じるばかりか、雨も吹き込んでしまいます。突然動かなくなることもありますが、開閉時に異音がしたり動きが明らかに遅くなったなどの前兆を見逃さないようにしましょう。

開閉しないとは異なる症状ですが、AUTO操作(自動で上下に動き続ける機能)ができなくなるケースもあります。下記の考えられる原因と故障診断では、共通のトラブル原因の他に「パワーウインドウに異常がないのに開閉が遅い場合」「AUTO機能が効かない場合」に分けて記載されています。

中村 武央 監修者
整備士 / テクニカルディレクター
中村 武央

兵庫県 猪名川町在住 1972年生まれ

2005年ラリージャパンではチーフメカニックとして活躍。プジョー、シトロエン、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなど、様々な欧州車メーカーの車両を数千台以上担当し、幅広い知識と技術を持つ。10代からクルマに興味を持ち、工業系大学卒業後、大手チューニングショップを経て1999年にワイエムワークスに入社。 …続きを読む

考えられる原因と故障診断

① パワーウインドウモーターの故障

原因

パワーウインドウが上下する動力はモーターによって作り出されています。このモーターが故障すると動きが遅くなったり、完全に動かなくなるなどの症状が発生します。パワーウインドウの作動音がおかしいと感じたら、完全に動かなくなる前に点検、修理を行いましょう。

診断方法

完全に動かない場合はモーターのコネクターに電圧が来ているか確認し、電圧がかかっているにも関わらず動かない場合はモーターの故障を疑います。動きが遅い場合にはモーターを取り外して単体で回転させ、回転速度が変わらなければモーターを疑います。単体にすると早く回転する場合は、レギュレーターの異常やガラスチャンネルの異常を併せて確認します。

修理・改善方法

モーターが原因と判断した場合はモーターの交換を行います。

② レギュレーターの故障

原因

モーターの回転を上下運動に変換するのがレギュレーターと呼ばれる部品です。このレギュレーターの動きが渋くなったり、パーツの欠けや外れが発生すると窓の開閉が遅くなったり、動かなくなるという症状が発生します。

診断方法

ドアの内張りを外し、レギュレーターの動きを目視で確認します。可動部や摺動部の異常がないか、異音やガタつきがないかの点検を行います。

修理・改善方法

レギュレーターの交換によって改善します。作業は慎重に行い、修理工場に依頼することを推奨します。

③ ガラスチャンネル(ガラスラン、ウエザーストリップ)の変形や引っ掛かり

原因

窓ガラスが上下するガイド部分のゴムが劣化や変形、汚れの堆積などによって滑りが悪くなると、動きが遅くなったり動かなくなったりすることがあります。

診断方法

窓ガラスを上下動かす際にゴム部分が振動していないか、引っ掛かって変形しながら動いていないかを確認します。

修理・改善方法

シリコンスプレーの塗布で一時的に改善することもありますが、基本的には部品の交換を推奨します。

④ パワーウインドウロックスイッチが働いている

原因

パワーウインドウロックスイッチが作動していると、一部のウインドウが開閉できなくなります。

診断方法

スイッチの状態を確認します。多くの車種では運転席のパワーウインドウ操作パネルの近くに備えられています。

修理・改善方法

ロックスイッチを解除することで改善します。

⑤ パワーウインドウスイッチの故障

原因

スイッチが故障すると開閉ができなくなることがあります。パワーウインドウの集中コントロールスイッチがある場合は、特定の席では操作ができないが、運転席などの集中スイッチからは操作できる場合があります。

診断方法

特定の席でのみ操作が効かない場合、スイッチの故障が疑われます。

修理・改善方法

スイッチの交換で改善します。

⑥ ヒューズの断線

原因

ヒューズの断線により電源が供給されず、動作しなくなる場合があります。

診断方法

取扱説明書でヒューズの位置を確認し、断線の有無をチェックします。

修理・改善方法

ヒューズの交換を行います。ただし、短絡などの原因がある場合は根本的な不具合の解決が必要です。

パワーウインドウに異常がないのに開閉が遅い場合

① バッテリーの電圧が下がっている

原因

バッテリーの電圧が低下すると、パワーウインドウの動作が遅くなることがあります。

診断方法

バッテリーアナライザーなどで電圧を測定し、バッテリーの状態を確認します。

修理・改善方法

バッテリーの交換で改善します。オルタネーターの故障が疑われる場合は、充電状態も確認が必要です。

AUTO機能が効かない場合

① AUTO機能が初期化されている

原因

バッテリーの切断やスイッチの取り外しによって、AUTO機能が初期化されることがあります。

診断方法

AUTOボタンがあるにも関わらず作動しない場合は、初期化の可能性があります。

修理・改善方法

メーカーや車種ごとの設定方法に従い、再設定を行います。修理工場に依頼するのが確実です。