タイヤの偏摩耗・片減り・不均一な摩耗の原因と対処方法

トラブル症状

タイヤの偏摩耗とは、タイヤの地面と接する面が均一に摩耗せずに、一部が著しく摩耗する症状です。片減りとも呼ばれることもあり、タイヤの外側や内側だけが摩耗したり、中央のみが摩耗してしまうパターンがあります。外側や中央の偏摩耗は気が付きやすいですが、内側の偏摩耗はタイヤ装着状態では気が付きにくいため、気づかないうちに症状が進行しているケースもあり注意が必要です。

タイヤの一部が摩耗しやすい状態ですので、そのまま使用を続けると偏摩耗した箇所がどんどん薄くなって溝が無くなり、やがてタイヤ内部の形状を保つためのワイヤーが出てきてしまいます。溝が無くなってしまうとグリップ力が著しく低下し、スリップや制動力の低下につながります。ワイヤーが出る状態まで症状が進行すると、パンクやバースト(タイヤの破裂)の可能性があり非常に危険です。

考えられる原因と故障診断

① タイヤ空気圧の過不足

原因

タイヤの空気圧は車種ごとに適正値が定められています。空気圧が高すぎるとタイヤが膨らみ、タイヤ接地面の中央が膨らんでしまい、中央のみが摩耗しやすくなります。反対に空気圧が低すぎると、タイヤの中央が凹んだ状態となり接地面の両側のみが摩耗しやすくなります。

診断方法

空気圧ゲージにて確認します。パンクにも注意が必要です。

修理・改善方法

定期的に正しい空気圧に調整することで改善します。また、こまめに空気圧を確認することでパンクなどの異常も早期発見が可能となります。

② トーイン・トーアウト(トー角)の不良

原因

トーイン・トーアウトはアライメントの一種で、直進安定性に関わるものです。車を真上から見た時に、前輪がカタカナの「ハ」の字の形になっているのがトーインの状態です。多くの場合、直進安定性を高めるためにトーインとなるようにセッティングされています。ただし、極端にハの字になってしまうとタイヤの外側が摩耗してしまうため、ごくわずかに角度がついている程度に調整されるのが一般的です。

トーインの反対向きに調整するのがトーアウトで、公道走行を目的とされた車両では基本的にトーアウトに設定することはありません。直進安定性が低くなる代わりに、コーナリング時のハンドリング応答性が向上するため、レースやサーキット走行時にセッティングすることがあります。トーアウトが過大の場合、タイヤの内側が偏摩耗します。

一般的な自動車は基本的にトーインに調整されていますが、縁石に接触したり、事故などによりタイヤに大きな衝撃が加わった際に調整が狂ってしまったり、トーイン・トーアウトを調整するためのロッドが曲がってしまい、異常な状態となっているケースがあります。

診断方法

アライメントテスター(サイドスリップテスター)を使用するか、トーゲージにて測定します。

修理・改善方法

専門の知識を持つ整備工場でタイロッドの長さを調整する必要があります。また、タイロッドが変形してしまっている場合は、タイロッドの交換が必要となります。

③ キャンバーの異常

原因

キャンバーもアライメントの一種で、直進安定性やコーナリング時のグリップ性能に関わるものです。車を正面から見た時に、タイヤがカタカナの「ハ」の字になっているのがネガティブキャンバー、ハの字の逆向きがポジティブキャンバーと呼ばれており、車種によってポジティブとネガティブは別れますが、基本的には0°〜±1°にセッティングされています。

ネガティブキャンバー(ハの字)過大の場合はタイヤの内側が、ポジティブキャンバー(逆ハの字)過大の場合はタイヤの外側が偏摩耗します。縁石にぶつかったり、大きな段差を勢いよく乗り上げたり、事故などでタイヤに大きな衝撃が加わってキャンバーが狂う場合と、サスペンション交換や車高調を導入するなどのカスタムによってキャンバーが狂ってしまうケースがあります。足回りのカスタム時には、アライメントの調整も同時に行うよう注意が必要です。

診断方法

アライメントテスターやキャンバーゲージを使用する測定方法の他、糸を垂らしてタイヤの上下の隙間を測定する方法、スマートフォンアプリを利用して測定する方法などがあります。

修理・改善方法

キャンバーは、基本的にトーインやトーアウト調整のように調整機構がありません。ショックアブソーバーとナックルを固定するボルトを細いものに変更し、ボルト穴にできた隙間(ガタ)の分で擬似的に調整する方法で解決します。また、サスペンション(ショックアブソーバー)が変形してしまっている場合は交換が必要になります。

④ タイヤの種類の選定ミス

原因

タイヤにはサイズ以外にも特性があるものがあります。ステーションワゴンやワゴン車といわれる車高が高く乗車人数が多い車両はポジティブキャンバーに設定されているケースが多く、タイヤの外側が偏摩耗しやすい傾向があります。そのためタイヤの外側を強くして摩耗しにくくしたワゴン用タイヤを装着することで偏摩耗を軽減することができます。

診断方法

取り付いているタイヤの用途や性能と車両の使用方法がマッチしているかを確認します。特に乗用車用タイヤと貨物タイヤでは耐荷重などが大きく変わるため注意が必要です。

修理・改善方法

サイズのみを見たタイヤの選定や、格安タイヤなどの品質のよくないタイヤを避けて、用途に合わせた信頼できるタイヤを使用する必要があります。