車の電気部品が反応しない原因と対処方法

トラブル症状
カーナビやオーディオ、ヘッドライトやエアコン、スターターなど様々な電気部品(電装品)を操作しても、反応しないという症状です。
電気部品にはエンジンや機能に直接関係があるものや、エンターテインメント性を高めるものなど様々ありますが、電源が同じヒューズから供給されているケースもあるため、運転に支障が無いからと不具合を放置すると思わぬトラブルに遭遇する可能性があります。
また、一口に動作しないといっても、故障しているケースや動作のための条件が整っていないケース、初期化や学習が必要なケースがあるため、専門の知識を持つ整備工場に相談することをお勧めします。
考えられる原因と故障診断
① 電源がとれていない
原因
電気部品が動作しない場合、一番初めに確認するのが「電源が来ているか」になります。電源がとれていない場合は、バッテリー上がりや、ヒューズの断線、配線の接続不良や断線などが考えられます。
診断方法
一番最初に行う診断は、動作しないのがその部品だけなのか、他の部品も同様かの判断です。すべての電気部品が動作しない場合は電装品の共通電源であるバッテリーが原因となっている可能性が高くなります。いくつかの部品や、個別の部品が動作しない場合は、動作しない部品の電源供給ラインに該当するヒューズやリレー、配線をテスターを使用しながら点検して原因を特定します。電源ラインは共通して使用しているケースも多く、配線図を見ながらの作業となるため、専門の知識が必要です。
修理・改善方法
バッテリー上がりの場合は、バッテリーの交換とオルタネーターの発電能力のテストを行うことで改善します。ヒューズの断線は、断線した原因を取り除いたうえでヒューズの交換を行い、コネクターや端子の接続不良は接続をしっかり行うことで改善します。配線が断線していた場合は、配線の修理を行うことで改善しますが、場合によっては配線の引き直しが必要になる可能性もあります。
② ボディアース不良
原因
車の電気回路は、電源のプラスラインを個別に引き回し、マイナスラインはバッテリーのマイナス端子と接続された車体フレーム全体を共通のマイナスラインとして使用しています。この方式をボディアース(車体アース)と呼びますが、家庭用電源にも使用される漏電防止アースとは別物です。
イメージしやすいように電球だけのシンプルな回路で考えると、まずバッテリーのプラスからヒューズを介して配線を伸ばし、電球のプラス極と接続します。次に電球のマイナス極の配線を車体の金属部分に接続すれば回路が完成するため、電球は点灯します。
電気部品の動作不良の場合、このボディアースが確実にとれていないことが原因となることも多いため、電源と併せて確認が必要です。
診断方法
アースの接続箇所を確認し、錆が発生していないかや、塗装が残って金属と接触していないかなど、電気の流れが邪魔されていないかを確認します。また、テスターを使用して電源とアース端子を計測し、電圧が測れるかの確認が必要です。
修理・改善方法
アース端子が接する金属部に錆や塗装がある場合はしっかりと取り除きます。アースを確実にするための歯付座金(ギザギザがついたワッシャー)を使用することも有効です。また、車体フレームと接続されていない金属に接続してもボディアースにはならないため、必ずフレームやエンジンなどの金属と接続することが必要です。
③ スイッチの故障
原因
電気部品への電源供給やアース接続をコントロールするための部品です。接点不良や内部の故障によって通電しなくなると、電気部品が動作しなくなります。
診断方法
回路から切り離し、テスターの導通モード(抵抗測定でも可)で単体テストを行うのが確実な方法です。切り離すのが難しい場合は、電圧の計測を行います。
修理・改善方法
スイッチの交換によって改善します。ただし、スイッチ単体での交換ができない場合は、電気部品ASSYでの交換が必要になるケースもあります。
④ センサー類の故障
原因
電気部品が動作するために、いくつかの条件が設定されている場合があります。例えば、暗くなったらヘッドライトを点灯する、設定温度より室温が高ければエアコンを作動させるなどです。このような場合、明るさを検知するためのセンサーや、室温を計測するセンサーに異常があると、正しく動作しなくなることがあります。
診断方法
診断ツールを接続して、異常が疑われるセンサーの入力値を確認します。例えば、明るさを検知するセンサーにはライトを当てたり、遮蔽物をかぶせて暗くするなどして入力値の変化を見ることでセンサーが正常に作動しているかの確認を行います。
修理・改善方法
不具合のあるセンサーを交換することで改善します。ただし、センサーの種類によっては初期化や初期学習が必要なケースがありますので、専門の知識を持つ整備工場での修理が必要です。
⑤ アクチュエーターの故障(本体の故障)
原因
インジェクターやEGRなどに使われる電磁バルブ(ソレノイドバルブ)や、パワーウインドウや電動格納ミラーのようにモーターが内蔵された駆動部分など、実際に可動する部分は一般的に「アクチュエーター」と呼ばれることが多くなります。このアクチュエーター部が故障して電気部品が動かなくなってしまったり、オーディオやETCなど、電子部品本体が故障してしまうと、動作しなくなります。
診断方法
電源やアース、スイッチが正常にも関わらず動作しない場合は、アクチュエーターや本体の故障が考えられます。
修理・改善方法
アクチュエーターや本体の交換によって改善します。
⑥ 条件が整っていない
原因
車の衝突軽減装置や、横滑り防止機能、オートヘッドライト、電動パーキングブレーキなど、作動するためにいくつかの条件が設定されている場合は、すべての条件を満たしていない状態では作動しなくなります。
例えば電動パーキングブレーキの場合、全てのドアが閉まっていること、シートベルトを装着していること、エンジンがかかっていること、バッテリー電圧が正常であること、電動パーキングブレーキの温度が異常ではないことなどの条件があります。
診断方法
取扱説明書を確認し、「故障かなと思ったら」の項目や、各機能の説明を確認します。輸入車の場合は、専門の知識を持つ整備工場や、ディーラーへ問い合わせることも有効です。
修理・改善方法
条件を満たすように確認・調整するか、整備工場やディーラーに相談してください。
⑦ 初期化されている
原因
車種やグレードにもよりますが、パワーウィンドウの機能の一つに自動で上下するAUTO機能があります。このAUTO機能はバッテリーの接続を切ったり、パワーウィンドウの操作スイッチコネクターを切り離すなどの作業を行うと、初期化されてAUTO機能が使用できなくなる場合があります。特定の手順で操作を行うと再度使用できるようになりますが、初期化の条件や復帰手順はメーカーによって異なりますので、専門の知識を持つ整備工場やディーラーにお問い合わせください。
AUTOパワーウィンドウ以外にも、スロットルセンサーやアクセルセンサーなど、様々な部品に初期化されるものがありますので、バッテリー端子の切り離しやコネクターの取り外し、部品交換の際には注意が必要です。
また、スマートキーやキーレスエントリーなどは、新品の部品を取り寄せても未登録の状態では使用できません。車とのペアリング(設定)作業が必要となります。
診断方法
初期化の条件や診断方法はメーカーや電装品によってかなり異なるため、整備マニュアルや専門の知識が必要になります。不具合が起きる前にバッテリー端子の取り外しやコネクターの取り外しがあったかなど、時系列をたどると原因が見つかる可能性もあります。
修理・改善方法
特定の手順で操作することで復帰するものや、診断ツールを使用しないと設定(初期学習)ができないものもあります。専門の知識を持つ整備工場や取り扱いディーラーへ相談することをおすすめいたします。

