車のブレーキ鳴き(ブレーキ時のキーキー音)の原因と対処法
トラブル症状
ブレーキをかけるとキーキーと音がするこの症状は、ブレーキ鳴きと呼ばれます。たまに音がする場合と、ブレーキング時には必ず鳴る場合、原因によっては走行時に常時鳴りっぱなしになる場合とに分かれます。また、雨天や湿度が高い時に鳴りやすいなど、条件が整うとブレーキ鳴きが発生することもあります。ブレーキ鳴きの原因は、以下の3種類が考えられます。
① 固有の振動が原因で音が鳴っているもの
② ブレーキパッドの残量が少なくなったことを知らせる音
③ ブレーキキャリパーの摺動不良などによって音が鳴っているもの
固有の振動が原因の場合は放置しても特に問題はありませんが、ブレーキパッドの残量が無くなったことを知らせる音の場合は放置するとブレーキパッドが完全に摩耗し、制動力が低下したり、ブレーキローターを傷つけてしまいます。また、ブレーキキャリパーの摺動不良によってブレーキパッドが元の位置に戻らずに引きずってしまっている場合は、ブレーキが異常に過熱したり、斜めに摩耗するなどの不具合が発生する可能性があります。
注意:ブレーキの分解を伴う整備は特定整備(旧:分解整備)に該当するため、必ず専門の知識と設備を持つ整備工場で点検や修理を行ってください。
考えられる原因と故障診断
① 固有の振動
原因
ディスクブレーキはブレーキパッドでローターを挟み込んで制動力を得ますが、その際にブレーキパッドが微細な振動を起こすことがあります。その振動がローターで増幅され異音として聞こえるようになりますが、これ自体は異常ではなく正常なブレーキでも起こる現象です。ブレーキパッドは低温時に固く、熱を持つと少し柔らかくなるという性質があるので、冬場の朝に鳴りやすい、朝一だけ症状が出るという場合はブレーキパッドが冷えていて音が出やすい状態のため異常ではありません。低速時もブレーキパッドは振動しやすく、低速でのブレーキ時だけ音がするなどの場合も同じく正常な範囲です。
診断方法
ブレーキ鳴きが起きるタイミングから判断します。走り出しや低温時に鳴りやすく、少し走行すると音が聞こえなくなるようなパターンの場合は振動が原因と推測されます。
修理・改善方法
ブレーキパッドの種類を変更する、ブレーキ鳴き対策用のグリスを塗布する、ブレーキパッドにスリットを入れるなどの方法があります。ただし、ブレーキ鳴き対策用のグリスは使用法を誤るとブレーキ能力が著しく落ちる可能性があるので注意が必要です。
② ブレーキパッドの摩耗
原因
一部の車種のブレーキパッドには残量が少なくなると、運転者に知らせるためのウェアインジケーターという金属の板を装着しています。ブレーキの残量が少なくなると、この金属板の一部がローターに当たってキーという音が発生します。どんな条件でもブレーキング時に音がするという場合は、ブレーキパッドが摩耗限度付近まで減っている可能性があります。また、初期段階ではブレーキング時にのみ音が発生しますが、症状が進行するとブレーキを踏んでいなくてもインジケーターがローターに接触して音が出ます。つまり、走行中は常にキーという異音が発生します。
診断方法
ブレーキの残量を確認することですぐに判明します。ウエアインジケーターは目視ですぐにわかりますので、タイヤを取り外しブレーキパッドを目視すればインジケーターがローターに当たっていないか確認することができます。
修理・改善方法
ブレーキパッドを交換することで改善します。ローターを傷つけてしまっている場合には、ローターの交換が必要になる場合もあります。
③ ブレーキキャリパーの摺動不良(軽い引きずり)
原因
ディスクブレーキはブレーキペダルを踏み込むとパッドでローターを挟み込む構造のため、油圧がブレーキキャリパーのピストンを押し出すことで力を利用しています。このピストンが押し出される際には、ピストン外周のゴム製リングを変形させながら飛び出します。ペダルから足を離すと油圧が抜けて、ゴムが元に戻る力でピストンをわずかに戻すことで、ブレーキパッドとローターの間に隙間を維持しています。
ブレーキパッドの摺動部や、キャリパーのシャフトなどの稼働部が摺動不良(動きが悪くなる現象)を起こすことがあります。これによりブレーキパッドの戻りが不十分になると、ピストンの戻りが十分とならず、パッドの戻りが悪くなり引きずったような状態になってしまいます。ブレーキパッドの片側が引きずったり、軽度の引きずりを起こすと、ブレーキ鳴きの原因となります。
この場合、たまにブレーキ鳴きが発生したり、頻繁に鳴っていても一度動きがよくなるとしばらく音が鳴らなくなるなど、症状が安定しない傾向が強くなります。
診断方法
ブレーキが軽く引きずっている状態ですので、車両をリフトアップした状態でタイヤを空転させた際に音が鳴ればブレーキの摺動不良や戻り不良が疑われます。
修理・改善方法
ブレーキキャリパーのオーバーホール(修理)によって改善します。キャリパーのオーバーホールは、一度キャリパーを分解してピストン等を取り外して清掃を行い、パッキンなどの消耗品の交換を行います。