トラブル症状
キースイッチを回したり、STARTボタンを押すなどエンジン始動のための操作をしてもエンジンがかからない。エンジンが始動しない問題は、クランキングの有無によって大きく2つのケースに分けられます。
- 【ケース1】クランキングはするエンジンがかからない場合(「キュキュキュキュ」とエンジンを回転させる動作)
- 【ケース2】クランキングすらしない場合(うんともすんとも言わない)
各ケースで考えられる原因は異なります。現状エンジンが始動しない状態のため、放置しても復帰する見込みはありません。そのため症状が悪化する可能性は低いですが、すぐに修理が必要です。
考えられる原因と故障診断
【ケース1】クランキングはするエンジンがかからない場合
① 点火プラグ、イグナイターの不良
原因
点火プラグ(スパークプラグ)に不良があり火花が飛んでいない、または、イグナイター(点火装置)が故障して適切な電圧が送られていない状態です。この状況では、燃料と空気の混合気に火花が飛ばず、爆発が起こりません。
診断方法
点火プラグの火花を点検します。プラグを外した状態でクランキングが必要なため、燃料に引火しないようフューエルカット処置をするなどの安全対策が不可欠です。専門知識がない場合は、この作業を試みず、整備工場に相談してください。
修理・改善方法
火花の飛び具合を確認し、特定のプラグのみ火花が飛ばない場合はプラグ交換をします。全てのプラグに火花が飛ばなければ、イグナイターの不良を疑い、イグナイター交換をします。
② 燃料が入っていない、燃料の種類を間違えている
原因
そもそも燃料が入っていなかったり、給油の際に指定された燃料以外を給油してしまった可能性があります。また、燃料計のセンサーが故障している場合は、燃料計の表示が狂っている可能性があります。
診断方法
燃料間違いはエンストするまでにエンジン不調が伴うため、エンストするまでの症状から判断します。燃料切れは燃料を補給することで間違いなく燃料が入っている状態にします。
修理・改善方法
燃料間違いの可能性が高い場合は、燃料タンクを外して燃料を抜き取ってから正しい燃料を給油します。燃料切れの場合は燃料の給油のみで改善します。なお、頻繁な燃料切れは燃料計の故障や燃費悪化の可能性があるため、総合的な点検をお勧めします。
③ 燃料ポンプの故障
原因
燃料を送るためのポンプが故障し、燃料が送られていない状態です。
診断方法
フューエルポンプにつながるフューエルホースの張り具合を確認したり、フューエルポンプの音を確認します。また、ホースを外した状態でクランキングを行い、燃料の噴出を確認する方法もありますが、引火の危険が伴うため注意が必要です。
修理・改善方法
燃料ポンプの交換を行うことで改善します。燃料ポンプは燃料タンクの中に設置されていることもあり、危険が伴います。そのため、必ず専門の整備工場で実施してください。
④ 圧縮圧が抜けている
原因
ピストンやシリンダー内壁に傷がついてしまったり、摩耗して気密性が保てなくなり、圧縮工程での圧縮が十分されずに爆発していない状態です。
診断方法
コンプレッションゲージと呼ばれる圧縮圧を測定する機器で計測します。コンプレッションには基準値がありますので、基準の圧力があるか確認することで判定します。
修理・改善方法
圧縮圧を測定し、規定値以下であればエンジンのオーバーホールを行います。これは大がかりな修理となるため、車両の状態や年式によっては買い替えの検討も視野に入れてください。
⑤ 点火タイミングが合っていない
原因
燃料が圧縮されたタイミングと、火花を飛ばすタイミングが合わずに爆発しない状態です。
診断方法
タイミングライトや診断ツールで点火タイミングの確認やセンサーの数値、エラーを確認します。
修理・改善方法
点火タイミングが調整できる場合(デストリビューター)は調整を行います。クランク角センサーやカムセンサーが原因の場合は、センサーを交換します。点火タイミングの問題は、エンジン性能や燃費に大きく影響するため、早めの対処が重要です。
【ケース2】クランキングすらしない場合
① バッテリーが上がっている
原因
クランキングするための電気が足りず、エンジンがかけられない状態です。
診断方法
テスターでバッテリー電圧の確認を行います。無操作時に12V計測できても、クランキング時に10V以下まで落ちる場合にはバッテリーの性能が劣化しています。また、クランキングができずに「カチカチカチ」と音がする場合にはバッテリー上がりのサインです。
修理・改善方法
バッテリーの交換または充電によって改善しますが、バッテリーが上がった原因が充電不良や暗電流の増大などの場合はすぐに再発してしまうため、バッテリー上がりの原因を推定することも大切です。
② シフトレバーがパーキングかニュートラルに入っていない
原因
車は安全装置がついており、シフトレバーがパーキングかニュートラル位置でしかエンジンがかけられなくなっています。
診断方法
シフトレバーの位置を確認します。スイッチが故障している可能性がありますので、何度かシフトを入れなおしてみるのも効果的です。
修理・改善方法
シフトレバーをニュートラル又はパーキングに入れることで改善します。
③ ニュートラルスイッチの故障
原因
上記安全装置のためのスイッチが故障し、シフトレバーがパーキングやニュートラルの位置でも安全装置が誤作動している状態です。
診断方法
診断ツールを接続し、スイッチの状態をモニターします。
修理・改善方法
ニュートラルスイッチの交換によって改善します。車種によって難易度が異なるため、整備工場での作業をお勧めします。
④ スターターモーターが故障している
原因
クランキングはスターターモーターによってエンジンを回転させ、エンジン始動のきっかけを作っています。スターターモーターが故障していると、カチカチと音はするけどエンジンが回転しようとしない、またはうんともすんとも言わない故障があります。
診断方法
スターターモーターの単体テストが必要です。ピニオンの飛び出しや戻りを確認するテストによって確認します。
修理・改善方法
スターターモーターの交換によって改善します。安全面でも重要な部品であるため、整備工場での修理をお勧めします。