トラブル症状

加速しようとアクセルを踏み込んだ際に、エンジン回転だけが上がってギアが滑っているような感じがしたり、変速のタイミングにラグがあるような症状が発生します。これは主にオートマチックトランスミッション（AT車）で発生するトラブルです。ミッションに関するトラブルは、症状が悪化すると走行不良に陥る可能性がありますので、異常を感じたら放置せずに早めの修理が必要です。

監修者

整備士 / テクニカルディレクター

中村 武央

兵庫県 猪名川町在住 1972年生まれ

2005年ラリージャパンではチーフメカニックとして活躍。プジョー、シトロエン、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなど、様々な欧州車メーカーの車両を数千台以上担当し、幅広い知識と技術を持つ。10代からクルマに興味を持ち、工業系大学卒業後、大手チューニングショップを経て1999年にワイエムワークスに入社。 …続きを読む

2005年ラリージャパンではチーフメカニックとして活躍。プジョー、シトロエン、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなど、様々な欧州車メーカーの車両を数千台以上担当し、幅広い知識と技術を持つ。10代からクルマに興味を持ち、工業系大学卒業後、大手チューニングショップを経て1999年にワイエムワークスに入社。確かな工学知識と柔軟な発想で、幅広い車種の整備・修理・カスタマイズを手がける。鋭い洞察力と豊富な経験を活かし、マニュアルに頼らない対応力でワイエムワークスの中核を担う。趣味はカート、スポーツ走行、車両製作。ラリー車両製作から輸入旧車のレストアまで幅広く対応。 閉じる

考えられる原因と故障診断

① トルコンの滑り

原因

オートマチックトランスミッション（AT車）にはクラッチ操作が必要ありません。クラッチの代わりに搭載されているトルクコンバーターという部品が、エンジンの動力をミッションに伝える役割を担っています。このトルクコンバーターは内部に封入されたオイルを介して動力を伝えています。トルクコンバーターの内部にはステータと呼ばれる部品があり、加速状態や減速時などにオイルの動きを反射して効率を上げたり、力を逃がして伝達効率を減らすなどの調整をする役割があります。このステータが故障すると、加速時に伝達効率が上がらず、エンジン回転と実際の速度に差が発生し、ギアがスリップしたような感覚になります。

診断方法

ストールテストを行いトルクコンバーターの状態を推察します。ただし、ストールテストはデリケートな診断方法で、テスト時間や方法を間違えるとトルクコンバーターを破損する可能性があるため注意が必要です。必ず専門の知識を持つ整備工場に依頼してください。

修理・改善方法

トルクコンバーターの交換によって改善します。基本的にはトランスミッションを取り外す作業を伴うため、特定整備（旧：分解整備）となりますので、専門の知識と設備を備えた整備工場に依頼してください。

② オートマチックトランスミッション内部の故障

原因

オートマチックトランスミッションの内部は非常に複雑な機構がいくつもかみ合って構成されています。走行中の油圧に応じて自動的に変速が行われますが、内部に異常が発生すると、変速のタイミングがずれたり変速が行われないなどの症状が発生します。

診断方法

試運転によって変速状態や異音などの確認を行います。ただし、正確な診断にはトランスミッションを分解する必要があります。

修理・改善方法

オートマチックトランスミッションが故障した場合は、内部構造が非常に複雑なため、ASSYでの交換となるケースがほとんどです。