クラッチが重い原因と対処方法
トラブル症状
クラッチペダルの踏み込みが通常よりも重い、または渋いと感じる症状が発生します。クラッチは発進時やシフトチェンジのたびに使用するため、踏み込みが重いと運転に支障をきたします。この状態で使用を続けると、他の部分にも悪影響が及ぶ恐れがあるため、早めの修理をお勧めします。
クラッチの重さはプレッシャープレート（クラッチカバー）の押し付け力に関連し、一般的にハイパワーの車ほど重くなる傾向があります。技術の進歩により現在では以前より軽くなってきていますが、車種によってクラッチの踏み力に差があるのも事実です。また、カスタムやエンジンチューンによる強化クラッチの装着により、標準仕様の車と比べてクラッチが重くなる場合もあります。
考えられる原因と故障診断
① クラッチディスクの摩耗
原因
クラッチディスクは消耗品で、使用するうちに徐々に摩耗していきます。クラッチディスクの摩耗とクラッチペダルの重さは一見無関係に思われますが、ディスクが摩耗するとプレッシャープレート（クラッチカバー）の爪状の板ばねの角度が変わり、押し込みに余分な力が必要となるため、ペダル操作が重くなります。摩耗による変化は徐々に進行するため、重くなったことに気付きにくい場合もありますが、新品交換後に軽くなったと実感することが多いです。
診断方法
クラッチディスクの摩耗を確認するには、トランスミッションを取り外し目視での確認が必要です。この作業は特定整備（旧：分解整備）に該当するため、専門知識を持つ整備工場での作業が求められます。
修理・改善方法
クラッチディスクを交換することで改善が見込めます。
② レリーズベアリングの動き不良
原因
レリーズベアリングは、シャフト上をスライドしてプレッシャープレート（クラッチカバー）のスプリング部を押す部品です。このレリーズベアリングが動くシャフト部でグリス切れや錆が生じたり、ベアリング自体にガタが生じたりすると、動きが渋くなりクラッチ操作が重くなるほか、引っ掛かりを感じることがあります。
診断方法
レリーズベアリングの異常もトランスミッションを取り外して目視で確認します。この作業も特定整備に該当し、整備工場での作業が必要です。
修理・改善方法
レリーズベアリングを交換することで改善されます。クラッチ部の分解が必要となるため、同時にクラッチディスクの交換もお勧めします。
③ クラッチワイヤーの固着
原因
ワイヤー式クラッチの場合、クラッチワイヤーの汚れや錆によって固着や動き不良が発生すると、クラッチ操作が重くなります。この状態を放置して使用し続けると、最悪の場合ワイヤーが断線してクラッチ操作が不可能となり、走行できなくなる恐れがあるため、早急な修理が必要です。
診断方法
クラッチワイヤーの両端のうち一方を取り外してワイヤーの動きを確認します。スムーズに動かない場合、内部に異常が発生している可能性が高いです。
修理・改善方法
クラッチワイヤーを交換することで改善が期待できます。交換時には正しい調整が必要ですので、専門知識を持つ整備工場での作業をお勧めします。
④ 強化クラッチが搭載されている
原因
クラッチを強化仕様にカスタムした場合、クラッチ操作が重くなります。これは故障ではないため、カスタムした車の所有者には驚きは少ないですが、カスタム済みの車を購入したり、他人の車に乗る際に通常より重く感じることがあります。
診断方法
強化クラッチが搭載されているかは、メンテナンスノートや分解整備記録簿でのクラッチ修理歴を確認するか、販売会社に問い合わせます。目視で確認する場合は、トランスミッションの分解が必要です。
修理・改善方法
故障ではないため修理は必要ありませんが、クラッチ操作を軽くしたい場合は純正クラッチに戻すことで改善が期待できます。
