プジョー専門店としての足跡|ワイドボディキット装着のWRCマシンレプリカ

プジョー専門店としての足跡|ワイドボディキット装着のWRCマシンレプリカ
小椋 正雄 私が書いてます
代表取締役
小椋 正雄(Masao Ogura)

京都府出身 河内長野市在住 1951年生まれ

日本のモータリゼーションの成長とともに育ち、欧州車に興味を持つ。メーカー勤務を経て1992年にYMワークスを創業、これまで約40年輸入車業界に携わる。メーカー勤務時には本社・工場の海外視察も経験し、現在も年に数回は英国、ドイツ、フランス等を訪問する。スーパーカーブームの少し前には単身渡欧を敢行。 …続きを読む

整備・修理がメインのプジョー専門店、がYMワークスの原点

現在は様々な車種に対応しているYMワークスですが、その原点は「整備・修理がメインのプジョー専門店」です。累計10,000台以上に及ぶ作業実績のうち約6,000台はプジョー(PEUGEOT)とシトロエン(CITROEN)によるもの。まだ輸入車の品質・信頼性が安定しなかった1990年代、整備・修理を基幹業務として輸入元の「正規サービス協力工場(現在制度廃止)」としても活動しました。時を同じくしてインターネットが普及しはじめると「ワイエム」の名は「プジョー・シトロエンの駆け込み寺」「最後の砦」とともに全国的に認知されるようになっていきます。

整備・修理と共に力を入れてきたのが「カスタム・チューニング」です。当時、日本国内にはプジョー・シトロエン向けのカスタム・チューニングパーツは情報すらありませんでした。欧州在住経験を活かし、プジョースポール(PEUGEOT SPORT)、グートマン(gutmann)、ムスケティア(MUSKETIER)等を次々と提案してきました。

中でもYMワークスを象徴する商品が今回、一部をご紹介する「ワイドボディキット」です。多くは当時人気の高かったWRC(世界ラリー選手権)のキットカー用パーツを取り寄せ、国内の一般走行に耐えうる加工を施して入念にフィッティング。プジョー206では自社開発商品としてもリリースしています。

今回、期せずして主要なワイドボディキット装着車が3台入庫しましたので、少し昔話をしようと思います。

プジョー 306マキシ(PEUGEOT 306MAXI)

記念すべき最初のワイドボディWRCレプリカ

最初にご紹介するのがプジョー 306マキシです。本物のWRCマシンはFFながら200psを発揮するエンジン、拡張されたトレッドにより時に上位クラスのWRカーを凌ぐ速さを見せ、特に下りターマック(舗装路)のSS(スペシャルステージ:タイムアタック区間)ではWRカーを抑えて最速タイムをマークする活躍を見せた人気モデルです。

レプリカとはいえ、リアルWRCマシンと同じプジョースポール製のボディキットを補強加工して装着しています。1号車は1995年当時活動していたブルーマジック(BLUE MAGIC)のグループ店と協力して製作しました。初期のベース車はプジョー 306S16 N3(前期型、2.0L 150ps 5MT)、その後、306のマイナーチェンジに伴いプジョー 306S16 N5(後期型、2.0L 163ps 6MT)で製作されています。YMワークスでも10台を製作し、一部の初期型車両では後期型のエンジンと6MTへの換装も実施しました。

日常的に使えるクルマであること

一部、「ガワだけのなんちゃってレプリカ」と揶揄する声もありましたが、雰囲気を楽しみ、内装や快適装備を維持して「日常的に使えること」は当初からのコンセプトの一つ。ランエボやインプレッサの市販車と同じです。誰もが競技をするわけではないのですから。

好きな方は、内装もエンジンも足回りも好みに合わせてカスタマイズすれば良いのです。

306マキシのレプリカは他社にて海外製レプリカパーツを装着した個体を含め、国内に20台以下と思います。大切にお乗りのお客様が多く、ワークス・プライベーターのお気に入りのカラーリングを施し、半数以上が現存しているようです。

中古車として販売中!新規の製作・補修部品としての供給もまだできます!

この車両は後期型306S16 N5をベースにEvo2と呼ばれる後期仕様のボディキットを装着して製作したものです。外観に見劣りしないトルキーでハイパワーなエンジン、6MTが標準仕様。内外装のコンディションも良好で中古車として販売中です。

なお、306マキシのボディキットは現在でも供給が可能(終了時期は不明)です。新規の製作から補修部品としての供給までご相談を承ります。

プジョー 106マキシ(PEUGEOT 106MAXI)

プジョー 106マキシ フロント
プジョー 106マキシ フロント

より身近で現実的な価格、加工工程・柔軟な販売形態を実現

プジョー 306マキシに引き続きリリースしたのがプジョー 106マキシです。リアルWRCマシン同様、高価な306に比べ、より身近で現実的なWRCマシンレプリカとして1997年に販売を開始しました。ワークスのリアルWRCマシンはキレイどころの女性ドライバーコンビが起用され、自動車専門誌Tipo(ティーポ)のWRCムック本の表紙を飾る等、クルマそのもの以外でも話題になりました。1号車にはこのワークスマシンのカラーリングを施しています。

現在でも根強い106人気に加え、新車・中古車でのコンプリート、装着キット化等の柔軟な販売形態をとることでYMワークス単独でも約30台を製作、グループ店に供給したキットも20以上に上ります。306マキシ同様にリアルWRCマシンと同じプジョースポール製のボディキットを補強加工して装着していますが、スポーツ走行派のオーナーが多い106ということもあり、現存数はかなり少なくなっています。

中古車として販売中!新規の製作・補修部品としての供給もまだできます!

この車両は約2年前、ボディキットの装着と共に主な劣化部品多数を新品換装、さらに様々な強化パーツを惜しみなく組み込み、フルレストアといえる工程で製作されています。コンディションは最上レベルといえる106ではないでしょうか。中古車として販売していますが、施工内容をリストアップしてありますのでこちらの記事もご覧ください。

なお、106マキシのボディキットも現在、供給が可能(終了時期は不明)です。新規の製作から補修部品としての供給までご相談を承ります。

YMスポーツ プジョー206WR(YM SPORT PEUGEOT 206WR)

プジョー 206WRCのイメージを手軽に再現するキットとして自社開発

2000年代初頭、WRCで連戦連勝の活躍を見せたプジョー 206WRCのイメージを手軽に再現するキットとしてYMワークスで自社開発しました。

自社開発に至った経緯は、以下のようなものです。
・トップカテゴリーの現行ワークスマシンのボディパーツの入手が事実上、不可能
・リアルの206WRCも206Super1600もホイールベースが延長され、加工装着のハードルが高い
※先行製作した206Super1600レプリカの「206マキシ」では加工・装着コストが増大
・リアルマシン向けボディパーツは強度・耐久性が考慮されていない
・自社開発により強度の確保、装着の容易性等の改善と様々なコストの低減が可能
・複数のお客様からの熱心なご要望

ボディパーツの製作工房、加工・装着・塗装の板金工場の協力により、これまでのボディキットとは一線を画する仕上がりになりました。その後も仕様変更・改良は続けられ、リアウィングやバンパーのオプション等でVer.1からVer.5が存在します。特にフィッティングの確実性と容易性の追求は、より多くの板金工場での装着を実現し、正規ディーラーからのご注文もいただきました。

装着台数は最終的にYMワークスで30台以上、グループ店他へのキット販売も20台以上に達しています。ベース車はトップグレードが圧倒的に多く、206S16、206GTi(YMワークス並行輸入車両)、206RCが中心です。

驚異的な取り付け強度とボディ装着部の耐久性

販売開始から20年以上、最終仕様でも15年以上が経過しますが、YMワークスで装着した車両の多くは今もってひび割れ等もなく外観も強度も保たれています。製作当時は装着や仕上げについても拘り「ちょっと過剰では」の声もありましたが、約20年という時を経てみると「キッチリ仕上げておいてよかった」という実感も沸いています。

この車両は206RCをベースに製作したVer.5でほぼ最後期の仕様です。この車両もキット装着から15年以上が経過しているもののボディ装着部ひび割れや塗装の劣化もほとんどなく、取り付け強度もかなりの状態を維持しています。

なお、この206WRキットの生産・補修部品としてのご提供も終了しています。

その他のワイドボディキット装着車

商業的に見れば成功といえるのはこれまでご紹介した106マキシ、206WR、306マキシの3モデルになりますが、以下のようなモデルもワンオフのご要望への対応や実験試作として製作してきています。特に206マキシ、207スーパー2000ではホイールベースの延長加工、ボディキットの加工・修正を要し、かなりの難産でした。製作台数も1-2台に留まり、一見、無駄のように見えますが、これらの経験・ノウハウの蓄積が他の作業にも活かされています。

様々なイベント会場で再会

送り出したワイドボディキット装着車とは各地で開催されるイベントやミーティングで再会することが多々あります。2010年6月に愛知県で開催されたPWBC(プジョーワイドボディサーカス)はその名の通り、ワイドボディキット装着車が主役。主催者から「7-8割は何らかのカタチでYMサンが関わってますから」とのお誘いを受け、参加してきました。

思えば「よくこんなに作ったよなぁ」というのが率直な感想です。お客様に喜んでもらえて、クルマも大事に扱ってもらえている。「夢を売る商売をしている」、はYMワークスの根底にある考えですが、そのことを少し実感した一日でした。

プジョー 106ラリー 1.3(PEUGEOT 106Rallye 1.3)

今回の主旨とは少し異なりますが、ある意味、日本においてプジョーを代表する1台であり、今となっては非常に希少な存在となってしまったモデルとしてご紹介します。カラーもレアなレッドです。

乗ればわかるその魅力、運転の原点を思い出させてくれるクルマ

プジョー 106ラリー 1.3(通称:テンサンラリー)は、懐の軽いプライベーターラリーストのために販売されたベースマシンです。なりはデカールはあるもののフツーのエントリーコンパクトカーで、特殊な電制装備もなく、搭載される直4 1.3Lエンジンは100ps。車重は810kg程とまずまず軽量ですが…スペックは平凡です。

プジョー 106ラリー 1.3の魅力は乗ってみないとわかりません。乗り出してスグに伝わる軽快感。走る・曲がる・止まるのクルマを操る動作がすべて自分に集約される充足感に加え、軽快な中にも粘りを感じるプジョーならではのハンドリングと乗り味、出力特性が絶妙で必要十分なエンジンのパワーとトルク、そして独特な感触のシフトフィール。最初の交差点の右左折でもこのクルマの魅力にハマってしまう人が少なくありません。

「クルマの運転ってこういうのだぜ」という主張をクルマの側からしてくるのです。

ある人には新鮮なインパクトを、ある程度、経験を積んだドライバーにはクルマの運転の原点を思い出させてくれるのではないでしょうか。

国内での知名度はプジョー No.1かも

正規輸入はされていないテンサンラリーですが、各地の並行輸入業者の手で100台程が並行輸入されたといわれています。カラーはホワイトがほとんどで、ブラック、レッド、イエローがごく僅か。

レア車でありながらも、前述の魅力・楽しさにより、自動車専門誌はもちろん様々なメディアで取り上げられました。ジャーナリストやクルマ好きの著名人にも注目され、テリー伊藤氏の愛車でもあったことはよく知られています。

本来、このクルマの世代ではない若い人の間でもよく知られているのはコミック「オーバーレブ!」の影響が大きいのでしょう。最近の派生作品では主役級とか。プジョーといえばテンサンラリー、を真っ先に思い浮かべるという方も少なくないそうです。今や国内での知名度ではプジョーでNo.1のモデルかもしれませんね。

このクルマは売約済みとなりましたが、中古車販売ページではプジョー 106ラリーの系譜や魅力を存分にお伝えしています。こちらもぜひご覧ください。

今後は…

以前よりは現場に関わることも少なくなったので、WRC参戦や欧州訪問、パーツ輸入や車両並行輸入他、YMワークスの活動全盛期の頃の昔話をしていこうかと考えています。

輸入車のことならお任せください。

輸入車のことならYMワークスにお任せください。当社の経験豊富なベテランメカニックが、お客様のご予算、ご要望、そして車両の状態を綿密に分析し、最適なサービスプランをご提案いたします。 他店やディーラーでご購入された方はもちろん、作業を断られた難しいケースでも、ぜひご相談ください。並行輸入販売から車検、点検整備、修理、板金塗装、買取、さらにはカスタムやチューニングまで、輸入車に関するあらゆるニーズにワンストップで対応いたします。 まずはお気軽にご相談ください。
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