アクセサリー電源(ACC電源)が入らない・作動しない原因と対処法

トラブル症状

エンジンの始動やホーンは正常に作動するが、アクセサリー電源(ACC電源)で動作するカーオーディオ、ドライブレコーダー、カーナビなどが動作しないことがあります。(全ての機器が動作しない場合と、個別の機器が動作しない場合があります)

車の電源には、キー位置にかかわらず常に電源供給を行う常時電源、キースイッチがIGの位置で電源を供給するエンジンや走行に直接関わるイグニッション(IG)電源、エンジン始動や走行に直接影響の少ないアクセサリー関係の電源を供給するためのアクセサリー(ACC)電源の3種類があります。そのうち、ACC電源ラインのトラブルが問題となります。

ACC電源が動作しない状態を放置すると、オーディオシステム、カーナビ、ドライブレコーダーが使用できないだけでなく、配線の接触不良が原因の場合、走行中の振動で電源が繰り返しON・OFFされ、機器に悪影響を及ぼします。また、断線している場合、芯線が露出した配線の末端が他の配線やボディとショートする可能性があります。複数の配線がショートすると、ACC電源ライン以外の配線(例えば制御信号配線など)に直接電源が流れ、予期せぬ故障の原因となります。

監修者
整備士 / テクニカルディレクター
中村 武央

兵庫県 猪名川町在住 1972年生まれ

2005年ラリージャパンではチーフメカニックとして活躍。プジョー、シトロエン、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなど、様々な欧州車メーカーの車両を数千台以上担当し、幅広い知識と技術を持つ。10代からクルマに興味を持ち、工業系大学卒業後、大手チューニングショップを経て1999年にYMワークスに入社。 …続きを読む
2005年ラリージャパンではチーフメカニックとして活躍。プジョー、シトロエン、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなど、様々な欧州車メーカーの車両を数千台以上担当し、幅広い知識と技術を持つ。10代からクルマに興味を持ち、工業系大学卒業後、大手チューニングショップを経て1999年にYMワークスに入社。確かな工学知識と柔軟な発想で、幅広い車種の整備・修理・カスタマイズを手がける。鋭い洞察力と豊富な経験を活かし、マニュアルに頼らない対応力でYMワークスの中核を担う。趣味はカート、スポーツ走行、車両製作。ラリー車両製作から輸入旧車のレストアまで幅広く対応。 閉じる

考えられる原因と故障診断

まずは、全てのACC機器が動作していないのか、単独のACC機器が動作していないのかを見極めます。全てのACC機器が動作していない場合はACC電源系統の確認を行い、単独の機器が動作していない場合は、その機器に接続されたACC電源の配線やボディアースを確認します。

全てのACC電源機器が動作しない場合

①アクセサリーヒューズの断線

原因

各電源ラインにはショート(短絡)時の火災や事故防止対策としてヒューズが入っています。ACC配線の末端がボディに触れてショートしたり、ACC電源ラインの機器の故障でショートしたり、ACC電源ラインの電気負荷が過剰となりヒューズが溶断したりすると、ACC電源のヒューズが断線し、ACCラインに電源供給ができなくなります。

診断方法

安全装置であるヒューズは、電源の大元に配置されています。そのため、まずはヒューズボックスを確認します。ヒューズボックスのフタの裏などに、どの回路にどのヒューズが使用されているかが記載されていますので、それを参照して特定します。

修理・改善方法

切れている場合】
ヒューズを交換するだけでは、再びヒューズが切れてしまう可能性が高いため、まずはヒューズが切れた原因、つまりショートしている場所を特定します。ショートの原因を取り除いた後に、ヒューズを交換します。なお、ヒューズの断線は必ずしもショートが原因ではありません。ヒューズの定格容量(アンペア数)のギリギリで使用することで熱を持ってゆっくりと溶断する場合や、長年の使用や振動による劣化で亀裂や接触不良が起こり、断線状態となることもありますので注意が必要です。

【切れていない場合
ショートが原因ではないため、ACC電源ラインのどこまで電源供給ができているかを調査します。全ての機器が動作しない場合、枝分かれした先ではなく、電源の大元の部分で断線やコネクターの接触不良が発生している可能性が高いです。不具合箇所を特定し、修理を行います。

②ACC電源ラインの断線

原因

ACC電源の+側配線が何かに挟まれてしまったり、配線の結束部が走行時の振動により負荷がかかって断線している可能性があります。断線のみでショートがない場合、ヒューズは切れませんが、電源の供給ラインが絶たれるため機器に電力が供給されず動作しなくなります。

診断方法

ヒューズが切れていないことを確認した後、テスターで機器のコネクター部や配線のコネクター部の電圧を計測します。キースイッチをACC位置にしても電圧がかからない場合、配線の断線が疑われます。その場合、ヒューズから電圧の計測を行い、少しずつ配線をたどって断線している個所を見つけます。

修理・改善方法

配線の修理や引き直しを行い、問題を改善します。

③ACC電源ラインのコネクターの接触不良

原因

浸水、錆び、塩害による腐食などでコネクターの金属端子部分が腐食し、抵抗が増大または接触不良が発生すると、電力を供給できなくなります。接点抵抗によって電圧が消費され、12Vよりも低い電圧しか供給できず、機器が動作しなくなります。

診断方法

ACC配線の電圧を計測します。12V車にもかかわらず9Vや6Vなど低い電圧が計測される場合、コネクターの腐食が疑われます。コネクターやヒューズボックスなど接点がある箇所を目視で点検してください。

修理・改善改善方法

コネクター内部の端子が原因の場合、オス・メス両側の端子を交換することで改善します。コネクターが熱で溶けている場合は、コネクター全体を交換する必要があります。

【単独のACC機器が動作しない場合】

他の機器が動いていることから、大元のACC電源には問題がないと考えられます。不具合が起きている機器のACC電源ラインの電圧やマイナス(ボディアース)を確認します。

①特定の電源配線断線やアース不良

原因

例えばETC車載機のみが作動しない場合、ETCの電源配線(プラス、マイナス)の断線やアース不良が原因となることが多いです。

診断方法

テスターで電圧を計測します。

【12V出力がある場合

+側の電源は正常ですので、-側のボディアースの接続を確認します。

【12V出力がない場合

電源が取れていないため、配線をたどって断線箇所を探します。機器によっては、ACC電源とは別に個別ヒューズがある場合もあるので、忘れずにチェックします。電源供給が絶たれている箇所を特定して修理します。

修理・改善方法

ボディアースがとれていない場合はしっかりとボディアースに接続することで改善します。それでも動作しない場合は、機器本体の故障が考えられます。この場合、機器本体の故障はバッテリーに直接接続してチェックが可能です。バッテリーに接続し確実に電圧をかけても動作しない場合は、機器の故障が考えられます。なお、万一の場合に備え、必ずヒューズを装着してください。

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